父と娘の歌

父と娘の歌

1965年10月30日に封切られた日活製作・配給の日本映画。白黒作品として公開され、その年の芸術祭参加作品にも選ばれました。監督は斎藤武市が務め、主演は当時のスターである吉永小百合とベテラン俳優の宇野重吉が担当し、父娘の深い愛情と困難に立ち向かう姿を描き出しています。

あらすじ

亡き母もピアニストであった卓紘子は、ピアニストになる夢を追って音楽大学への入学を目指しており、そのための学費を貯めるべくアルバイトに励む日々を送っていました。しかし、クラリネット奏者として活躍していた父・道一が、過去に起きた盗難事件で無実の罪を着せられて楽団を追われた上に、心臓を患いクラリネットを演奏することができなくなっているという辛い現状を知ります。父の窮状を目の当たりにした紘子は、自身の将来のために貯めていた大切なお金を、迷うことなく父を助けるために使う決意をします。

厳しい指導で知られる師・江戸のもとで研鑽を積んだ紘子は、念願叶って音楽大学に入学します。新しい環境、特に寮生活に馴染むことができず孤独を感じていた紘子に、優しく寄り添い、支えとなったのは、同級生の山口という学生でした。音楽への情熱を燃やす紘子は、練習中に指を怪我するというアクシデントに見舞われますが、持ち前の精神力でこれを乗り越え、再びピアノに向き合います。そして、病と失意から立ち直れずにいる父に対し、再びクラリネットを手にし、オーケストラのオーディションを受けるよう強く説得します。娘の熱意に心を動かされた道一は、再び音楽の道に挑戦することを決意。物語のクライマックスでは、父がクラリネットを演奏するオーケストラと共に、紘子がチャイコフスキーのピアノ協奏曲第一番を堂々と弾き切る姿が描かれ、父娘の絆と音楽への情熱が見事に昇華されます。

スタッフ

企画：坂上静翁
監督：斎藤武市
助監督：鍛治昇
脚本：鍛治昇、林馬呂
撮影：萩原憲治
音楽：小杉太一郎
指揮：山田和男
ピアノ指導：室井麻耶子
美術：坂口武玄
録音：沼倉範夫
照明：大西美津男
編集：近藤光雄

キャスト

卓紘子：吉永小百合
父 道一：宇野重吉
母 妙子（故人）：奈良岡朋子
阿川：浜田光夫
吉行：山内賢
江戸基次：神山繁
マネージャー 北原：近藤宏
若い医師：波多野憲
東大附属病院院長：伊藤寿章
山口：吉行和子
道一のアパート管理人：天坊準
音楽大学教授：長尾敏之助

その他

本作は『ぼくはどうして涙がでるの』と同時上映されました。

（参照：allcinema, KINENOTE）

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