宇野重吉

宇野重吉の生涯と業績

宇野重吉（うの じゅうきち、1914年9月27日 - 1988年1月9日）は、日本の舞台、映画、テレビで幅広く活躍した俳優であり、演出家、映画監督としても知られています。本名は寺尾信夫。彼は、戦前から戦後にかけて日本の演劇界を支え、特に劇団民藝の創設に大きく関与しました。

幼少期と教育

福井県で生まれた宇野は、裕福な農家の家庭に育ちましたが、4歳の時に父を失い家計が厳しくなります。旧制福井中学に進学しましたが、学資の都合で中退し、母のもとで働きながら上京します。早稲田での工手学校を卒業した後、マルクス主義の影響を受けて日本大学芸術科へ進学。その後、プロレタリア演劇に感銘を受け演劇の世界に足を踏み入れることになります。

映画と演劇の道

1932年、プロレタリア演劇研究所に入所した宇野は、1933年には東京左翼劇場で活動を始め、同年に木村荘十二監督の映画『河向ふの青春』で映画デビューを果たしました。1940年には治安維持法違反で投獄されますが、その後、日本移動演劇連盟を設立し、地方の農村や漁村で演劇を楽しむ機会を提供しました。

1947年には滝沢修と共に第一次民衆芸術劇場を設立し、その後、劇団民藝（第二次民藝）を創立。彼はこの劇団の中心人物として、現代劇の発展に寄与しました。宇野は細やかな演出で知られ、代表作には『ゴドーを待ちながら』『夕鶴』、さらには彼自身が演出を手がけた『三人姉妹』などが含まれます。

映画監督としての業績

戦後、宇野は映画界でも活動し、1948年の『わが生涯のかがやける日』で本格的な映画出演を果たし、以後も多くの名作に顔を出しました。特に新藤兼人監督とのコラボレーションが有名で、『愛妻物語』や『第五福竜丸』などでの彼の存在感は非常に印象的でした。映画の中では、善良な市民を演じることが多かった彼ですが、悪役にも挑戦し、役作りに真剣に取り組んでいました。

近年の活動と晩年

1985年以降、宇野重吉一座を立ち上げ、全国公演を通じて生の舞台を多くの人々に届けるための活動を行っていました。しかし、晩年は健康問題に苦しみながらも、地方公演を続けました。1987年に肺癌の手術を受けた後も舞台に立ち続け、その情熱を貫く姿勢は感動を呼びました。

残念ながら1988年に亡くなると、彼の業績は多くの人々の心に残り続けています。葬儀には多くの仲間やファンが参列し、彼の偉大な足跡に敬意を表しました。

人物と影響

宇野重吉は、その軽妙な演技と印象的なキャラクターで多くの観客を魅了しました。彼の長男である寺尾聰も俳優として活躍しており、親子での共演も実現しています。また、彼は完璧主義と言われる滝沢修とは対照的に、より気さくで柔らかい人柄だったと伝えられています。

宇野重吉の名前は、舞台芸術に足を運ぶ多くのファンに忘れられることはないでしょう。彼の遺した業績は、今もなお多くの劇団や役者に影響を与え続けています。

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