片岡市蔵 (5代目)

五代目片岡市蔵の生涯と業績

五代目片岡市蔵（ごだいめ かたおか いちぞう）は、1916年2月10日に東京で生まれました。本名は片岡太郎（かたおか たろう）で、歌舞伎の世界では松島屋の屋号を持ち、定紋は銀杏丸です。俳名は我升であり、歌舞伎役者として多くの名脇役を演じました。

市蔵は四代目片岡市蔵の子として、この至芸の世界に足を踏み入れました。1922年1月に新富座での『吉様参由縁音信』において、子役として初めて舞台に立ちました。彼のキャリアの始まりは非常に早く、子役ながら持ち前の才能を遺憾なく発揮しました。

その後、1934年10月に著名な歌舞伎座で『桐一葉』に出演し、五代目片岡市蔵を襲名しました。この出来事は彼の名題昇進を意味し、以降は本格的に歌舞伎役者としての道を歩むことになりました。彼の演技力は多くの観客を魅了し、名脇役としての地位を不動のものとしました。

戦後の時代においては、七代目松本幸四郎の一座に参加し、彼の死後は十一代目市川團十郎の門下に移りました。市蔵は、『天衣紛上野初花』の北村大膳や、『一谷嫩軍記』の平山武者所、また『仮名手本忠臣蔵』の鷺坂伴内など、多くの当たり役を演じたことで知られています。彼の演技はその役柄の持つ深い感情を巧みに表現し、観客に強い印象を残しました。

しかし、彼の生涯は不幸な事故により1991年に幕を閉じることとなります。6月30日、酔った状態で営団地下鉄千代田線の湯島駅でホームから線路に転落し、電車に轢かれて亡くなりました。この突然の死は、歌舞伎界に大きな衝撃を与えました。彼の最後の舞台は歌舞伎座での『鬼一法眼三略巻・一条大蔵譚』における八剣勘解由という役柄でした。

市蔵には3人の子供がいます。長男は六代目片岡市蔵として活動しており、次男は四代目片岡亀蔵として知られています。長女は落語家の春風亭一朝に嫁いでいます。このように、彼の家系は芸能界での活躍が引き継がれています。

片岡市蔵は、その卓越した演技力や多彩な役柄を通じて、多くの人々に感動を与えました。彼の生涯と業績は今もなお、歌舞伎ファンに語り継がれています。彼の存在は、歌舞伎芸術の発展に大きく寄与し、その足跡は決して消えることがありません。

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