片岡我當 (5代目)

五代目1935年1月7日 - '>[片岡我當]は、日本の歌舞伎界を代表する名優の一人です。上方歌舞伎を拠点としながらも、江戸歌舞伎にも造詣が深く、その芸域は実に多岐に渡ります。

十三代目片岡仁左衛門を父に持ち、東京で生まれた我當は、同志社大学工学部という異色の経歴を持っています。1940年、わずか5歳で大阪歌舞伎座にて初舞台を踏みました。幼少期から歌舞伎の舞台に立ち、研鑽を積んでいきます。戦後、父や兄弟と共に拠点を関西に移し、「七人の会」や「仁左衛門歌舞伎」といった重要な公演に参加。関西歌舞伎界の中核を担う存在として成長しました。

1971年、大阪新歌舞伎座で『桜時雨』の三郎兵衛、『二月堂』の良弁を熱演し、五代目片岡我當を襲名。襲名後は、父や弟、そして三代目實川延若、三代目中村鴈治郎らといったそうそうたる面々と共に、関西歌舞伎の復興に大きく貢献しました。その功績は高く評価され、大阪府民劇場賞を受賞しています。

我當の芸風は、堂々とした体格と、張りのある声質、そして堅実な演技で知られています。立役から荒事、敵役、老役まで、幅広い役柄をこなすその力量は、長年の舞台経験に裏付けられたものです。代表的な当たり役としては、『夏祭』の三婦、『輝虎配膳』の長尾輝虎、『封印切』の八右衛門、『時平の七笑』の時平公、『沼津』の平作、『松浦の太鼓』の宝井其角など、枚挙にいとまがありません。

また、我當は父である仁左衛門の勧めもあり、菊五郎劇団に参加。江戸歌舞伎の技術や作法を学び、上方歌舞伎とは異なる伝統や表現様式を自身の芸に取り入れました。この経験が、我當の芸の幅を広げ、さらに深みを与えることになったと言えるでしょう。

弟には、二代目片岡秀太郎と十五代目片岡仁左衛門という、歌舞伎界を代表する兄弟がいます。我當は、この三兄弟の長兄として、兄弟間の調停や連携をとりまとめる役割も担っており、家族、そして歌舞伎界全体において重要な存在でした。

我當の長男は、片岡進之介です。その血を受け継ぎ、歌舞伎界で活躍する後継者が育つことを期待する声も多いです。五代目片岡我當は、その芸の深さと、歌舞伎界への貢献、そして家族をまとめるリーダーシップにより、後世に長く記憶される名優と言えるでしょう。

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