片岡音吾

片岡音吾：日本の証券界を築いた実業家

片岡音吾（1881年2月2日-1948年5月6日）は、日本の近代証券業界において重要な役割を果たした実業家です。岡山県岡山市に生まれ、大阪商業学校（現在の大阪公立大学）、東京高等商業学校（現在の一橋大学）と順調に学業を修め、卒業後は日本興業銀行に勤務しました。

銀行勤務時代に、その優れた才覚を見込まれ、後に野村證券の礎を築くことになる野村徳七氏からスカウトを受けます。37歳の若さで、新設された大阪野村銀行の取締役兼支配人に就任し、経営の中枢を担いました。この抜擢は、片岡音吾の潜在能力の高さを示すものと言えるでしょう。

大阪野村銀行において、片岡音吾は証券部部長として活躍し、日本の証券業界の将来を見据え、アメリカ合衆国への視察に派遣されました。この視察は、後の野村證券の設立と発展に大きく貢献する貴重な経験となります。帰国後、1925年に設立された野村證券の初代社長に就任。社長として、積極的に事業を展開し、1926年には公社債専門業者として営業を開始、翌年にはニューヨーク出張所を開設するなど、国際的な視野も持ち合わせていました。

野村證券の事業拡大は、片岡音吾の戦略的な経営手腕によるところが大きいです。1938年には、公社債専業から脱却し、株式業務への進出を果たします。これは、日本の証券業界の構造改革において重要な一歩となりました。1941年には社長を退任し、会長に就任。その後、第二次世界大戦終戦後の混乱期において、公職追放となりました。

戦後の財閥解体、公職追放という困難な状況下においても、片岡音吾の影響力は衰えませんでした。野村證券の後継者である北裏喜一郎氏に対して「野村証券はこの程度の追放で屋台骨がくずれることはないはずだ。玉ねぎのようにいくら皮をむいても新しい芽が出てくる。」と激励の言葉を贈っています。この言葉は、困難に屈することなく、未来に向けて努力を続けることの重要性を示唆しており、片岡音吾の揺るぎない信念とリーダーシップを物語っています。

片岡音吾の次男は、ジャパンライン（現商船三井）社長を務めた片岡晴四郎氏です。彼の活躍も、片岡家の人材育成力の高さを示しています。

片岡音吾は、単なる実業家としてだけでなく、日本の経済発展に貢献した人物であり、その功績は現代においても高く評価されています。彼のリーダーシップ、先見性、そして困難な状況下でも決して諦めない強い意志は、後世の経営者にとって、貴重な教訓となるでしょう。彼の生涯は、日本の近代経済史において、重要な一章を刻んでいます。

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