版と刷

出版物における「版」と「刷」

出版物における「版」とは、同一の原版から印刷され、内容がほぼ同一であるものの総称です。一方、「刷」とは、同じ版の中で印刷時期が異なるものを指します。しかし、実際には「版」と「刷」の区別は曖昧で、特に日本では両者が混同されることがあります。

版の種類

「版」には、内容の変更、装丁の種類、判の大きさ、出版地・出版者、メディアの種類など、様々な種類があります。

内容の変更を表すもの

初版：最初に発行された版
第2版、第3版など：内容が改訂された版
訂正版：誤植などが修正された版
増補版：内容が追加された版
補正版：内容が修正された版
2020年版など：発行年を明記した版

装丁の種類を表すもの

豪華版：装丁が豪華な版
愛蔵版：保存を目的とした特別な版
廉価版：価格を抑えた版
普及版：一般向けに広く販売される版
文庫版：小型で携帯しやすい版

判の大きさを表すもの

卓上版：机上で使用するのに適した版
ポケット版：ポケットに入る小型の版
大活字版：文字が大きい版

出版地・出版者を表すもの

駿河版：駿河で出版された版
勅版：天皇の命により出版された版
講談社版：講談社から出版された版

メディアの種類を表すもの

Kindle版：電子書籍のKindle形式の版
* PDF版：PDF形式の電子書籍版

これらの版は、「廉価版の第2版」のように、内容の変更を表す版と他の種類を組み合わせることがあります。

「第〇版」という表記は、内容の変更を表す基本的なもので、和書・洋書を問わず用いられます。英語では「Second edition」や「2nd edition」、ドイツ語では「Zweite Auflage」や「2. Aufl.」と表記されます。これらの情報は、表紙、背表紙、標題紙、箱などに記載され、和書では奥付、洋書では標題紙の裏に記載されます。

初版は、通常は奥付や標題紙の裏に記載されることが多く、最初から表紙に記載されることは稀です。初版本は古書市場で高値で取引されることもありますが、そのような本は何度も版を重ねていることが多く、それぞれの出版者や装丁に「初版」が存在します。古書収集家にとっての「初版」とは、世界で最初に出版された初版の、その第1刷を指します。

その他、「新版」「改訂版」「増補版」「増補改訂版」などの表記も用いられます。これらは「増訂第5版」のように、序数詞と組み合わせて使われることもあります。改訂版が発行された場合、その次が「改訂第2版」となることもあれば、改訂版を第2版と見なし「第3版」となることもあります。

刷の種類

「刷」とは、同じ版を用いて同時に印刷されたものを指します。和書では、「第3版第2刷」のように版に続けて序数詞で表記されますが、洋書では刷を明確に書くことは比較的少ないです。標題紙の裏に再版の年を記したり、プリンターズキーと呼ばれる数字の羅列で表示することがあります。

プリンターズキーは刷を重ねるごとに数字を一つずつ削っていくことで、刷数を表します。例えば「1 3 5 7 9 8 6 4 2」であれば、最初の印刷で全て表示され、2刷目には「3 5 7 9 8 6 4 2」、3刷目には「5 7 9 8 6 4 2」となり、6刷目には「7 9 8 6」となります。印刷年も同様の方法で表示することがあります。

本来、「刷」の間には差異はほとんどなく、誤植の訂正程度です。しかし、日本では「版」と「刷」の区別が曖昧で、実際に「版」や「刷」と書いてあっても、それが正確かどうかは判断できません。刷での訂正や追加箇所が序文で明らかにされている場合や、刷の序数を変えずに改版している（例:「第34刷改版」）場合もあります。長年にわたり増刷されているものでは、文字サイズの変更によりページ数が大きく変わることもあります。また、本文ではなく巻末付録の資料や正誤表が更新されることもあります。

このように、「版」と「刷」は出版物において重要な概念ですが、実際には曖昧な部分も多く、注意が必要です。

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