牡蠣の森を慕う会

「牡蠣の森を慕う会」は、宮城県気仙沼市唐桑町の漁民たちが中心となり、「森は海の恋人運動」を推進している団体です。代表は畠山重篤氏（有限会社水山養殖場 代表取締役）が務めています。

運動の始まりと背景

高度経済成長期に失われた豊かな海を取り戻したいという強い思いから、1989年（平成元年）に「森は海の恋人運動」が始まりました。この運動は、気仙沼市在住の歌人、熊谷龍子氏の歌「森は海を海は森を恋いながら悠久よりの愛紡ぎゆく」にちなんで名付けられた「森は海の恋人」というキャッチフレーズと共に、全国へと広がりを見せました。

漁民たちが森づくりを行うというユニークな発想は、海水と河川水が混ざり合う汽水域での生物生産において、上流の森の腐葉土を通過した河川水や地下水が重要な養分を運んでくるという、漁民たちの長年の経験に基づく気づきから生まれました。

具体的な活動内容

会の活動は、気仙沼湾に注ぐ大川の上流域、岩手県室根村（現在の一関市室根町）の室根山に広葉樹の森を作ることから始まりました。この森は「牡蠣の森」と名付けられ、森と川と海が一体のものであるという運動のシンボルとなりました。その後、植林場所は矢越山へと移り、毎年6月には「森は海の恋人植樹祭」が開催され、全国から1,000人を超える人々が集まります。

また、同会は、気仙沼湾に注ぐ大川の流域住民、特に子供たちを対象とした環境教育活動を、気仙沼市唐桑町の舞根湾において継続的に行っています。2010年（平成22年）には、この活動に参加した子供たちの数が1万人を超えました。

組織の変遷と震災からの復興

運動の継続とさらなる発展を目指し、平成21年5月11日には「特定非営利活動法人森は海の恋人」が設立されました。東日本大震災では甚大な被害を受けましたが、多くの寄付によって持ち直し、現在も積極的に海の環境保全に努めています。

「牡蠣の森を慕う会」の活動は、漁民たちの熱意と自然への深い理解に基づいた、持続可能な社会の実現に向けた重要な取り組みとして、高く評価されています。グッドデザイン賞の新領域デザイン部門を受賞（2002年度）したことも、その活動の意義を裏付けています。

「森は海の恋人」運動が示すもの

「森は海の恋人」運動は、単なる植林活動にとどまらず、森・川・海という生態系全体の繋がりを理解し、それを次世代に伝えていくための環境教育活動としての側面も持ち合わせています。この運動を通して、私たちは自然との共生の大切さを改めて認識し、持続可能な社会の実現に向けて、一人ひとりができることを考え、行動していく必要性を学ぶことができます。

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