牧神の午後 (ロビンズ)

『牧神の午後』の魅力

『牧神の午後』（ぼくしんのごご、英: Afternoon of a Faun）は、バレエ振付家ジェローム・ロビンズが創作した作品で、クロード・ドビュッシーによる音楽『牧神の午後への前奏曲』を使用しています。この作品は、ダンススタジオでの二人の若いダンサーの出会いと、その交流を描いています。1953年5月14日にニューヨーク・シティ・バレエ団によって初演され、以降世界中のバレエ団で上演され続けています。

背景と創作プロセス

この作品の発想は、ドビュッシーの楽曲の元となったステファヌ・マラルメの詩『半獣神の午後』や、1912年にニジンスキーが振付を担当した『牧神の午後』から影響を受けています。ニジンスキー版は当時、あまりに性的な要素を含んでいたためスキャンダルを引き起こしました。ロビンズもまた、その振付スタイルに影響を受けつつも、自身の観察や経験に基づいて新たな解釈を試みました。

ロビンズは1948年にニューヨーク・シティ・バレエ団に参加し、1953年の公演に向けて作品を制作しました。当時、彼は17歳のダンサー名エドワード・ヴィエラの動きに着想を得るなど、リハーサルスタジオでの偶然の出会いからインスピレーションを受けました。また、若い黒人ダンサーのルイス・ジョンソンと女子生徒が鏡を見ながら稽古する姿も心に残り、彼の創作意欲を掻き立てました。

振付と作品のスタイル

舞台は夏の午後のダンススタジオで、男性と女性のダンサーは互いに鏡越しで見る交流が描かれます。ロビンズは、シンプルで詩的な振付にこだわり、複雑な技術は排除しました。このアプローチは、「派手なステップよりも、心の動きを大切にした」という姿勢が表れています。作品の中では、男女のダンサーがゆっくりと互いに接近し、最後には男性が女性の頬にキスし、女性が去ると、男性は再び眠りに落ちるという情景が描かれています。

批評家アマンダ・ヴァイルはこの作品について、「簡潔さと詩性を追求した」と評価し、初演時のダンサーはこの振付がマラルメの詩とリンクすることを指摘しました。ルクレアによると、本作の振付は彼女の日常的な身振りも盛り込まれたとされ、演じる者により様々な解釈が生まれる余地が広がりました。

上演の歴史と影響

『牧神の午後』は、初演以来、ニューヨーク・シティ・バレエ団のレパートリーとして定着しました。1958年から1961年には、ロビンズのバレエ団「バレエUSA」が米国国務省の後援を受けてツアーを行い、その中でも作品が上演されました。1970年代以降は、英国ロイヤル・バレエ団やオーストラリア・バレエ団などもこの作品を取り入れ、さらに広がりを見せています。

映像作品の残存

ルクレアとモンシオンによる『牧神の午後』の映像は、現在手に入るものが限られていますが、カナダ放送協会が撮影した映像が存在しています。80年代にはNBCで放映された際、いくつかの作品と共に紹介されました。近年では、名作として評価され続けており、文化的な影響が感じられる作品となっています。特に2020年には、ニューヨーク・シティ・バレエ団がアーカイブ映像をオンライン配信するなど、現代においてもその価値が認められています。』

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