特別引出権

特別引出権（SDR）とは

特別引出権（Special Drawing Rights, SDR）は、国際通貨基金（IMF）が1969年に創設した国際準備資産およびその単位です。通貨コードはXDRで表されます。SDRは、加盟国が外貨準備を補完し、国際取引を円滑にするために導入されました。特定の一国の通貨価値に依存しない、新たな準備資産としての役割が期待されています。

SDR創設の背景

1960年代、アメリカの経常収支赤字が拡大する中、当時の主要な準備資産であった金と米ドルだけでは、世界貿易の拡大を支えるには不十分であるという認識が高まりました。そこで、IMFはSDRを創設し、加盟国に割り当てることで、国際的な流動性を高めることを目指しました。

SDRの仕組み

SDRは、IMFの加盟国に出資割合に応じて配分されます。SDRを受け取った国は、必要に応じてIMFを通じて、他の加盟国の保有する自由利用可能通貨（米ドル、ユーロ、人民元、円、ポンド）と交換できます。また、IMFへの出資や貸し出しもSDR建てで行われます。ただし、SDRの保有は公的主体に限定されており、民間取引では使用されません。

SDRの価値

SDRの価値は、自由利用可能通貨の加重平均によって計算され、日々更新されます。構成通貨と加重比率は5年ごとに見直されます。2022年の見直しでは、SDRの価値は以下の通貨の合計となりました。

0.57813米ドル
0.37379ユーロ
1.0993人民元
13.452日本円
0.080870イギリスポンド

SDRの歴史

SDR創設当初は、1SDRが金0.888671グラムに相当するとされましたが、1973年の変動相場制移行に伴い、1974年に通貨バスケット方式が導入されました。当初は16通貨で構成されていましたが、1980年には5通貨（米ドル、ドイツマルク、フランスフラン、日本円、イギリスポンド）に絞られました。2000年には、ドイツマルクとフランスフランがユーロに置き換えられ、構成通貨は原則5年ごとに見直されることになりました。


2015年の見直しでは、人民元が構成通貨に採用されました。この背景には、中国の輸出額の増加と人民元の国際的な利用拡大があります。中国は、預金金利の自由化などの改革を進め、各国に人民元のSDR入りを支持するよう働きかけました。2016年10月1日には、人民元が正式にSDRの構成通貨となりました。

公的準備資産としてのSDR

SDRは、米ドルに代わる公的準備資産として創設されましたが、2016年現在、SDRが世界の外貨準備全体に占める割合は3%を下回っています。SDRの活用を拡大する議論はあるものの、大きな進展は見られていません。

SDR金利

SDR金利は、SDRを構成する通貨の短期金利の加重平均に基づいて毎週決定されます。この金利は、IMFからの借入金利や加盟国がIMFに預ける資金に対する金利の計算に用いられます。

まとめ

SDRは、国際的な金融システムを安定させるための重要な手段であり、今後の国際的な金融動向にも影響を与える可能性があります。SDRの動向を理解することは、世界経済の現状を把握する上で不可欠です。

関連事項

ブレトン・ウッズ協定
国際通貨
バンコール
モントリオール条約
ヘーグ・ヴィスビー・ルール

外部リンク

* IMFサイト：ファクトシート - 特別引出権（SDR）

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