特別科学学級

特別科学学級とは

特別科学学級（とくべつかがくがっきゅう）は、第二次世界大戦末期の日本において、優秀な科学者や技術者の育成を目的として設立された英才教育機関です。この制度は、全国の中から選ばれた児童や生徒に対して高度な教育を提供し、結果的に日本の戦後の経済成長を支える人材を育成しました。この特別な教育機関は、「特別科学教育学級」や「特別科学教育班」とも呼ばれました。

設立の背景

1944年9月、衆議院議員の永井柳太郎により「戦時穎才教育機関設置に関する建議案」が衆議院に提出され、同年中に可決されました。文部省は、特別な科学教育を通じて、日本の科学技術の飛躍的向上を図ることを目指し、特別科学教育班を設置します。設置先としては、東京高等師範学校（現在の筑波大学）、東京女子高等師範学校（お茶の水女子大学）、広島高等師範学校（広島大学教育学部）、金沢高等師範学校（現在の金沢大学教育学部）が選ばれました。

選抜と授業の開始

特別科学学級は、主に4年生から6年生の児童と旧制中学校の生徒から、数学、物理、化学に優れた生徒を選抜して教育を行いました。1945年1月から授業が開始され、次いで京都帝国大学にも特別科学教育班が設置され、こちらでは5月から授業が行われました。特別科学学級の各クラスでは、定員は30名と定められていました。

教育内容

特別科学学級のカリキュラムは、非常に高度で、旧制高校の教育内容を旧制中学の教育課程内で理解させることを目指しました。数学であれば、関数や対数、さらには導関数や微分方程式にまで触れることが指導されました。また、物理学や化学の授業では、実験に重点が置かれ、実際に手を動かすことで深い理解が促進されました。特に名誉教授の中には、既に著名な物理学者である湯川秀樹が直接指導を行うなど、指導陣も豪華でした。

制度の廃止と影響

戦後、日本が敗戦を迎えたことに伴い、特別科学学級は「差別的で民主主義に反する」と批判され、1946年に廃止されました。そして1947年3月31日をもって、完全に終了しました。しかし、この特別教育を受けた生徒たちは、戦後の日本社会において多くの分野で活躍し、高度経済成長を支える重要な役割を果たします。

主な卒業生

特別科学学級からは、数多くの著名な卒業生が輩出されました。東京高等師範学校附属中学校からは、東京大学や名古屋大学など様々な大学に進学した多くの学生がいます。その中には、映画監督の伊丹十三や小説家の筒井康隆といった文化的な影響力を持つ人物も含まれています。卒業生たちは、その後も強い結束を維持し、定期的に同窓会を開くなど交流を続けています。

まとめ

特別科学学級は、短期間であったにも関わらず、日本の科学技術の土台を築くための重要な役割を果たしました。多くの優秀な人材を輩出し、戦後の日本において新たな成長の原動力となったこの教育機関は、今なお高く評価されています。

もう一度検索