特別自然美観地域

特別自然美観地域（AONB）について

特別自然美観地域（Area of Outstanding Natural Beauty、以下AONB）は、イギリスのイングランド、ウェールズ、北アイルランドの田園地帯における特に価値のある景観を指定し、その保護に努める制度です。国立公園と同じく、1949年に施行された国立公園及び田園アクセス法に基づき設けられました。地域の指定は、政府の外部機関が行うため、各地の環境保全が目的となっています。ただし、AONBは国立公園と比較して特別な法的権限を持たないため、開発からの保護を受ける場合に制約があることが特徴です。

AONBの数と地域の分布

2022年時点で、イギリスには46のAONBが存在します。内訳は、イングランドが33、ウェールズが4、北アイルランドが8となっています。最初に指定されたAONBは、南ウェールズのガワー半島に位置するガワーAONBで、1956年に指定されました。一方、1995年に新たに認定されたテイマー・バレーAONBが最も新しい事例です。また、2010年にはストラングフォード・ラフAONBとレカール・コーストAONBが合併し、クルイディアン・レンジAONBが拡張されるなど、地域の調整も進んでいます。

AONBの面積と特性

各AONBの面積や用途はさまざまで、すべての区域が一般公開されているわけではありません。最も小さなAONBはシリー諸島AONBで16平方キロメートル、一方最も広大なAONBはコッツウォルズAONBで2,038平方キロメートルに及びます。AONBはイングランドとウェールズの約18%の田園地域をカバーしており、北アイルランドでは海岸線の約70%を含んでいます。

制度としての成立と歴史

AONBの概念は、1945年に公務員で建築家のジョン・ダワーによって提唱されました。彼は、国立公園指定には適さないが、美しい景観の保護が必要な地域について言及し、これが1949年の法律に組み込まれることとなりました。AONBは特別委員会によって管理され、各地方自治体の責任で運営されていますが、初期には法的義務が限られていました。しかし、2000年にはカントリーサイド・アンド・ライツ・オブ・ウェイ法が施行され、規制と保護が強化されました。2021年には、新たなAONBの指定が行われ、特にヨークシャーウォルズやチェシャー・サンドストーンリッジなどが新規指定されました。

AONBの目的と運用

AONBの主な目的は、自然の美しさを保護し、地域の持続可能な発展と結びつけることです。このため、農林業や地域産業が共に進化できるような地域づくりが求められます。また、レクリエーションの振興も許可されており、観光や地域振興に寄与することが期待されています。AONBは、景観の価値が国立公園と同等であるため、国立公園と比較されることがしばしばありますが、この認知度を高めるための取り組みも行われています。

開発への脅威

環境保護団体は、AONBの地位が開発の危機にさらされていると懸念しています。イングランド農村部保護キャンペーンによれば、多くのAONBが過去にない脅威に直面しており、特にドーセットAONBやサセックス・ダウンズAONBなどが挙げられます。これらの地域では、新たな開発計画に対する強い反対も存在し、環境活動家と開発者の間で緊張が続いています。

地域の景観が持続可能であるためには、AONBの適切な管理と、過度な開発からの保護が求められています。これからも、AONBが持つ自然の美しさを保ちながら、地域産業の発展を両立させる努力が必要です。

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