特呂二号原動機

特呂二号（KR10）について

特呂二号（KR10）は、第二次世界大戦中に開発された日本の液体燃料ロケットエンジンで、秋水戦闘機に搭載される予定でした。原動機として高温ヴァルター機関を採用しており、これは過酸化水素を主成分とする独自の燃料システムを利用しています。

開発経緯

特呂二号は、イタリアの潜水艦「伊29」によって運ばれたドイツからの戦略物資の見返りとして、戦後その技術を日本に持ち帰った技術者たちが、HWK 109-509の資料を参考に開発しました。このエンジンの核心となるシステムは、化学反応を利用して推進力を得るというものです。具体的には、濃度80%の過酸化水素を酸化剤として使用し、メタノール57%、水化ヒドラジン37%、水13%からなる混合燃料と組み合わせて反応を促します。

燃料と触媒

特呂二号の甲液には、反応促進と安定性を確保するためにオキシキノリンとピロ燐酸ソーダが加えられており、乙液には銅シアン化カリウムが用いられています。また、二酸化マンガンや過マンガン酸カリウム、苛性ソーダを用いた触媒は反応を一層助けます。この自己着火性の推進剤は、特定の比率（質量比10:3.6）での混合が求められ、安定した燃焼を実現しています。1945年6月にこのエンジンは、開発が完了しました。

仕様

特呂二号の一般的な特性は以下の通りです。

• - 形式: 液体燃料ロケットエンジン
• - 全長: 2500mm
• - 乾燥重量: 170kg

エンジンの主要な構成要素には、14500rpmで回転するタービンがあります。使用燃料は、30%のヒドラジン、57%のメタノール、13%の水の混合と、80%の過酸化水素からなる酸化剤を同時に噴射する形で利用します。

性能

このエンジンの主な性能は以下の通りです。

• - 推力: 1500kgf (15kN)
• - タービン入口温度: -
• - 比推力: 215秒
• - 燃焼時間: 300秒
• - 燃焼室圧力: 20kgf/cm²

保存状況

特呂二号の資料や実物は、以下の場所で保存されています。

• - 三菱重工業名古屋航空宇宙システム製作所史料室
• - 呉市海事歴史科学館（燃焼室とノズル）
• - プレーンズ・オブ・フェイム航空博物館

関連項目

特呂二号に関連するエンジンには、以下のようなものがあります。

• - HWK 109-509（Me163に搭載）
• - BMW 109-718（離陸補助ロケット）
• - XLR11（音速を超えたX-1に搭載）
• - XLR99（X-15に搭載）
• - ブリストル・シドレー BS.605

参考文献

特呂二号の詳細な開発背景や技術的な情報は、以下の文献からも得ることができます。

• - 藤平右近『機密兵器の全貌 わが軍事科学技術の真相と反省（II）』
• - 松岡久光『日本初のロケット戦闘機「秋水」 液体ロケットエンジン機の誕生』
• - こがしゅうと「アナタノ知ラナイ兵器「秋水 第一回」」（スケールアヴィエーション）

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