特定原材料

特定原材料

「特定原材料」とは、日本の食品表示制度において定められている、食物アレルギーの原因となる可能性のある食品群のことです。特に、アレルギー症状を引き起こす頻度が高く、かつ症状が重篤になりやすいとされる特定の食品について、消費者がアレルギー物質の含有を容易に確認できるよう、包装などに表示が義務付けられています。

概要

日本の食品表示基準に基づき、アレルギーの原因として特に注意が必要な8品目が「特定原材料」として指定され、その使用の有無を表示することが法的に義務付けられています。これに加え、アレルギーを引き起こす可能性があり、表示が推奨されている20品目が「特定原材料に準ずるもの」として別途定められています。これら義務表示品目と推奨表示品目を合わせて「特定原材料等」と総称されます。

アレルギーを持つ方が食品を安全に選択できるように、食品メーカーなどが特定原材料等を使用せずに製品を製造した場合には、「この製品には特定原材料等を使用していません」といった趣旨の表示を行うことが推奨されています。ただし、アレルギー物質が含まれていることが、その食品の名称などから明らかである場合には、表示が省略されることもあります。

制度は時代とともに見直されており、特定原材料に指定される品目も変遷してきました。当初、2001年には小麦、そば、卵、乳、落花生の5品目が特定原材料でしたが、2008年にえびとかにが追加され、2023年にはくるみが加わり、現在の8品目となりました。食品表示に関する業務の所管は、かつて厚生労働省が担っていましたが、2009年9月1日からは内閣府の外局である消費者庁に移管されています。

食品製造の過程で、意図しないアレルギー物質の混入の可能性が完全に排除できない場合であっても、「含まれているかもしれない」といった曖昧な可能性表示を行うことは認められていません。これは、そのような表示がかえって消費者の適正な商品選択の機会を奪う可能性があるためです。一方で、製造ラインでのコンタミネーション（意図しない混入）に関する注意喚起表示が行われるケースはあります。

特定原材料（8品目）

食品表示法に基づく表示義務の対象となる品目です。

えび（海老、エビ、えび天ぷら、サクラエビなど）
かに（カニ、蟹、上海がに、マツバガニ、カニシューマイなど）
くるみ（クルミ、くるみパン、くるみケーキなど）
小麦（コムギ、小麦粉、こむぎ胚芽など）
そば（ソバ、そばがき、そば粉など）
卵（玉子、たまご、鶏卵、うずら卵、厚焼玉子、ハムエッグなど）
乳（ミルク、バター、チーズ、アイスクリーム、ガーリックバター、乳糖、牛乳など）
落花生（ピーナッツ、ピーナッツバター、ピーナッツクリームなど）

特定原材料に準ずるもの（20品目）

通知により表示が推奨されている品目（任意表示）です。

アーモンド（アーモンドオイルなど）
あわび（アワビ、煮あわびなど）
いか（イカ、いかフライ、イカ墨など）
いくら（イクラ、すじこ、いくら醤油漬けなど）
オレンジ（オレンジソース、オレンジジュースなど）
カシューナッツ
キウイフルーツ（キウイなど）
牛肉（牛、ビーフ、牛脂、ビーフコロッケなど）
ごま（ゴマ、胡麻、ごま油、すりゴマなど）
さけ（鮭、サーモン、しゃけ、スモークサーモンなど）
さば（鯖、サバ、さば節、さば寿司など）
ゼラチン（板ゼラチン、粉ゼラチンなど）
大豆（だいず、ダイズ、大豆煮、大豆たんぱくなど）
鶏肉（とりにく、鶏、鳥、チキン、焼き鳥、ローストチキンなど）
バナナ（ばなな、バナナジュースなど）
豚肉（ぶたにく、豚、ポーク、ポークウィンナー、豚生姜焼など）
まつたけ（松茸、マツタケなど）
もも（桃、ピーチ、もも果汁、黄桃、白桃など）
やまいも（山芋、ヤマイモ、千切りやまいもなど）
りんご（リンゴ、アップル、アップルパイ、リンゴ酢など）

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