特急にっぽん

東海道本線を行く人間模様：映画『特急にっぽん』

1961年、東宝が製作した映画『特急にっぽん』は、東海道本線を疾走する特急列車「こだま」号を舞台に、個性豊かな乗客乗員たちの織りなす人間ドラマを描いた作品です。原作は獅子文六の小説『七時間半』。モノクロの東宝スコープ作品として、1961年4月4日に公開されました。同時上映作品は『別れて生きるときも』でした。

物語は、東京駅から大阪駅へ向かう特急「こだま」号の車内で展開します。中心となるのは、食堂車で働くコック助手の矢坂喜一（フランキー堺）とウェイトレスの藤倉サヨ子（団令子）。2人はいつか自分たちで小さな大衆食堂を開くことを夢見ていました。

ある日、「こだま」号には菓子メーカー社長の岸和田太市（小沢栄太郎）が乗客として乗り込みます。客室乗務員の今出川有女子（白川由美）は、岸和田社長に赤坂にレストランを作る計画を打ち明けます。この計画に、食堂車の従業員である矢坂は強い憤りを感じます。その様子を見たサヨ子は激怒し、コーヒーを載せたお盆をひっくり返してしまうというハプニングが発生します。

この騒動は、一時、車内に緊張が走る爆弾騒ぎかと心配されるほどの事態に発展しかけました。しかし、何とか事態は収拾され、「こだま」号は名古屋駅を出発。しかし、京都駅へ向かう途中で線路上の事故が発生し、列車は緊急停車。数分間の遅延が生じます。

様々な出来事や人間関係の摩擦、そして予期せぬ出来事が、「こだま」号の車内で次々と起こります。乗客それぞれの思惑や葛藤、喜びや悲しみ、そして出会いと別れ。これらの出来事が、列車の旅の間に複雑に絡み合い、乗客乗員たちの生き様を映し出していきます。

豪華キャスト陣にも注目です。フランキー堺と団令子の他に、白川由美、小沢栄太郎、沢村貞子、中島そのみ、滝田裕介、太刀川寛、森川信、中真千子、塩沢とき、藤岡琢也、横山道代、堺左千夫など、個性豊かな俳優たちが脇を固めています。

『特急にっぽん』は、単なる列車内の出来事を描いた作品ではありません。時代背景や社会情勢を反映しながら、人間の心の機微を繊細に描き出しています。限られた空間の中で、様々な人間模様が交錯する様は、観る者の心を強く揺さぶります。列車という移動空間を舞台に、人生の縮図が凝縮された、見応えのある作品と言えるでしょう。

映画は、終点の大阪駅に到着するまで、乗客乗員たちの様々なエピソードを丁寧に紡ぎながら、彼らの生き様を映し出していきます。そして、その旅の終わりには、それぞれの登場人物が新たな一歩を踏み出す、そんな希望を感じさせる、心温まる結末が待っています。

この作品は、現在でも様々なプラットフォームで視聴可能です。日本[[映画]]データベース、allcinema、KINENOTE、国立[[映画アーカイブ]]などで情報を確認できます。東海道新幹線の開通前、国鉄時代の特急「こだま」号の雰囲気を感じながら、時代を超えた人間ドラマをぜひご堪能ください。

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