特採

特採（特別採用）とは

製造業における特採（とくさい、特別採用）とは、製品や部品が規格に適合しないと判定された場合でも、再審査を経て、特定の使用条件下で利用を許可する制度です。これは、規格に合致しないからといって、必ずしも製品としての機能や品質が損なわれているわけではないという考えに基づいています。規格に対して厳密に合致している製品は「合格」となりますが、そうでないものは一旦「不合格」とされます。しかし、この「不合格」と判定された製品でも、再度審査を行い、特定の条件を満たせば「特採」として認められることがあります。特採となった製品は、ロットの一部または全部が後工程で使用されることになります。

特採の種類

規格外と判定された製品の中には、実質的には良品であるにもかかわらず、規格の厳しさによって不適合となる場合があります。このような場合には、特採後、規格自体の見直しが検討されることがあります。一方、規格外であるだけでなく、不良品と判定された製品でも、後工程でその不良を承知の上で受け入れる場合があります。これは、不良品を前工程に返品するよりも、後工程で品質を挽回する方がコストやリスクを抑えられる場合に適用されます。後者の場合、製品は「条件付き使用」とされ、後工程で使用する際に特定の条件（例：乾燥させてから使用）が課せられることがあります。

特採の判定は、一般的に以下の3つに分類されます。

そのまま使用: 規格外ではあるものの、品質に問題がなく、そのまま使用できると判断された場合。
条件付き使用: 特定の条件を満たすことで、後工程での使用が認められる場合。
不採用（廃却）: 品質上の問題やコスト面から、使用を認めず、廃棄処分とする場合。

特採の手順

特採は、一般的に以下の手順で進められます。

1. 不合格判定: 検査部門が製品を検査し、規格に適合しないと判断した場合、不合格と判定されます。
2. 特採申請: 不合格となった製品を製造した前工程が、特採票などの文書を用いて再審査を申請します。
3. 審議: 特採委員会（または同様の組織）が、製品の品質、製造経緯、後工程での使用可能性などを総合的に審議します。この際、製造、検査、販売などの部門から担当者が参加し、多角的な視点から検討が行われます。審議の結果、「そのまま使用」「条件付き使用」「不採用」のいずれかが上申されます。
4. 決裁: 最終的な特採の可否は、工場長などの経営責任者が決定します。品質だけでなく、数量、原価なども考慮し、総合的な判断が下されます。
5. 使用: 「条件付き使用」と判定された場合は、指定された条件に従って製品が後工程で使用されます。
6. 是正: 特採後、再発防止のために前工程の改善や検査規格の見直しが行われます。特採を繰り返すと、品質意識の低下につながるため、是正措置が重要となります。特に、一度特採となったものが再び不合格となった場合、特採は認められず、不合格とされます。

特採の歴史

特採制度の起源は明確ではありませんが、日本では戦後、米軍規格MIL-Q-5923C（後のMIL-Q-9858）の影響を受け、製造現場で広く導入されるようになりました。1970年代には「トクサイ」という言葉が一般的に使用されるようになり、製造業において重要な役割を果たしてきました。

しかし、2017年には、神戸製鋼所が顧客の了解を得ずに特採品を出荷していたという不正が発覚し、特採制度の運用における倫理的な問題が浮き彫りになりました。

特採の注意点

特採は、あくまで例外的な措置であり、濫用は禁物です。特採を頻繁に行うと、品質管理に対する意識が低下し、製品の品質を損なう可能性があります。したがって、特採を行う際には、再発防止のための是正措置が非常に重要となります。

また、特採は品質だけでなく、数量やコストも考慮に入れて判断する必要があるため、経営的な視点も必要となります。

まとめ

特採は、規格外とされた製品を有効活用するための制度ですが、その運用には慎重さが求められます。適切な手順を踏み、再発防止に努めることで、品質を維持しながら、製造コストを最適化することが可能になります。

参考文献

石川, 馨 (1989-01-31), 品質管理入門 (第3 ed.), 日科技連, ISBN 4-8171-0017-6
* 佐々木, 脩 (1989-06-30), “第12章 特採”, 検査管理の実際, 日刊工業新聞社, pp. 177-186, ISBN 4-526-02539-9

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