不良品

不良品とは

不良品とは、設計段階や製造、輸送過程での不都合により、機能上の欠陥や動作不良を起こす工業製品などを指します。対義語として良品がありますが、消費者レベルでは意識的に使われることは少なく、通常は「正常な製品」として認識されます。

製造段階では、部品ごとに厳格な検品が行われ、良品と不良品が区別されますが、本稿では主に市場に流通し、消費者が手にする状態の工業製品について解説します。

不良品の概要

工業製品は、消費者の手に渡った際に仕様通りに動作することが求められます。しかし、消費者の期待を裏切り、正常に動作しないものが「不良品」とされます。不良品かどうかは消費者の期待レベルによって判断されるため、製品の機能自体には影響しない外装上の傷や汚れでも、不良品として扱われることがあります。

良品と不良品の間

良品と不良品の区別は、単純な製品では「動くか動かないか」で判断できますが、精密機器では一定の性能許容範囲内で機能するものを良品とし、基準を満たさないものを不良品とするなど、判断が難しい場合があります。

例えば、液晶画面では「白と黒を表示した際に、目立つドット抜けがないこと」が工業レベルでの良品基準ですが、表示ソースや利用者の主観によっては大きな問題と見なされることがあります。

また、色合いのような微妙な感覚も、消費者レベルで問題視されることがあります。アニメ映画『千と千尋の神隠し』では、DVDの色合いが強すぎると消費者運動に発展したケースがあります。

製品の種類によっても基準が異なり、家庭用パソコンのフリーズはよくあることですが、金融機関のシステムでは致命的な問題です。

不良品と消費者

不良品は生産過程で一定数発生しますが、多くのメーカーは消費者の手に渡る前に廃棄や修理を行っています。しかし、検査ミスや輸送中のトラブルにより、消費者の手元に不良品が届くこともあります。特に電子機器では、一定期間の使用後に故障が発生することがあり、検査をすり抜けることがあります（→エイジング）。

多くのメーカーは、保証期間を設け、期間内に故障した製品を無償修理または交換します。購入時期を特定するための保証書が添付され、販売店側で購入日と販売店を記入する仕組みになっています。

購入直後の初期不良の場合は、販売店が交換対応を行うことがあります。これは販売店の自主判断によるもので、必ずしも交換されるとは限りません。

保証期間終了直後に製品が故障することがあり、これは「ソニータイマー」と呼ばれることもあります。

輸送機械では、故障が人身事故につながる可能性があるため、リコール制度があります。家電製品でも、設計や部品の不具合が発煙や発火につながる場合は、メーカーの責任で無償修理が行われます。

兵器では、不良品の使用が味方への被害を引き起こす可能性があります。例えば、不発弾は、使用時に爆発せず、後になって予期せぬタイミングで爆発し、意図しない対象を殺傷する可能性があります。

理不尽な要求（クレーム）と不良品

製品に問題がなくても、消費者が期待した性能が出なかったり、機能に不満がある場合に、メーカーに苦情を訴えるケースがあります。性能に関しては、カタログスペックを満たさない場合は不良品と判断できますが、消費者が過剰な期待を抱いている場合や、カタログに記載されていないことに対する不満は、メーカー基準では不良品とは見なされません。例えば、「空飛ぶ円盤のおもちゃが飛ばない」といったケースが挙げられます。このような場合は、広告上の問題として扱われることもあります。

日本では、このような理不尽な要求は「クレーム」と呼ばれます。本来のクレームは故障や機能異常に関する苦情を指しますが、日本では和製英語的な使われ方をすることがあります。理不尽な要求をする顧客への対応は難しく、企業によっては専門の対策班を設置していることもあります。

広義の不良品

本来、不良品は工業製品に対して使われる言葉ですが、一定の規格から外れたものに対しても使われることがあります。例えば、農業では規格外の農産物が不良品扱いされることがあります。しかし近年では、規格外の農産物を「自然である」として好む消費者も出てきており、皮肉な逆転現象も見られます。

規格外の農産物は、見た目や傷など、食品としての性質には問題ないものの、商品としては価値が低いとされます。販売や輸送に耐えられない農産物は、加工食品の原料として使われることがあります。

人に対しての表現と問題

教育の現場では、教育方針から外れる生徒を暗に不良品扱いする傾向があります。しかし、人は生物である以上、画一的にはならず、多様性があって維持される社会を否定することは、社会システムの硬直化を招きます。そのため、1990年代以降は、個性を重視する教育が模索されています。

不良行為少年や障害者を指して「不良品」と呼ぶケースがありますが、これは問題のある表現です。

ジョーク

エスニックジョークとして、不良品に関する次のような話があります。

アメリカの会社がロシアと日本の会社に「不良品は1000個に1つ」という条件で発注しました。ロシアの会社は「不良品を1000個に1つにするのは困難なので、納期を延ばしてほしい」と回答。日本の会社は「不良品の設定図を送ってほしい」と回答しました。

不良品