特攻隊に捧ぐ

特攻隊に捧ぐ

坂口安吾の『特攻隊に捧ぐ』は、戦後日本の風潮に逆らい、特攻隊員の心情に真摯に向き合った異色の評論です。敗戦後の日本社会では、戦争に関わるあらゆるものが否定的に捉えられていましたが、安吾は特攻隊員の行動や心情の中に、人間の尊厳や美しさを見出そうとしました。

作品の背景

この作品は1947年に発表される予定でしたが、GHQの検閲によって発禁処分を受けました。GHQは「軍国主義的」であると判断したのです。しかし、この作品はプランゲ文庫に収録され、後に再評価されることになります。

作品の内容

安吾は、戦争の悲惨さを認めつつも、特攻隊員の心情を深く考察します。彼らは軍部の欺瞞に利用された面があったとしても、死の恐怖と闘いながら、祖国のために命を捧げたという事実は否定できません。安吾は、特攻隊員の心情を「死にたくない本能との格闘」と表現し、彼らの苦悩に寄り添おうとします。

安吾は、特攻隊という戦法を擁護するわけではありません。むしろ、戦争そのものを残酷であると批判します。しかし、戦争という極限状態において、特攻隊員が見せた人間の尊厳や美しさは、忘れてはならないと訴えます。彼らは愛国の詩人であり、自らの命を捧げるという究極の行為を通して、人間の可能性を示したのだと安吾は考えます。

安吾は、特攻隊員の心情を疑うことを戒めます。彼らは死にたくないという本能と闘いながら、それでも祖国のために命を捧げました。その行為を卑怯だとか、女々しいなどと批判することは、彼らの尊厳を傷つける行為だと安吾は主張します。

作品の意義

『特攻隊に捧ぐ』は、戦後日本の思想史において重要な意味を持つ作品です。この作品は、戦争の影に隠された人間の真実を浮き彫りにし、私たちに戦争の多面性を認識することを促します。また、GHQの検閲によって発禁処分を受けたという事実は、戦後日本の言論統制の実態を物語っています。

岩田温は、知覧特攻平和会館で特攻隊員の遺品や遺書を目にした際に感じた、彼らの苦悩や葛藤、そしてその心のまま出撃したかもしれない「切なさ」、その「高貴さ」を、坂口の文章から思い出したと述べています。

まとめ

坂口安吾の『特攻隊に捧ぐ』は、特攻隊員の心情を通して、戦争と人間の本質に迫った作品です。この作品は、戦後日本の思想史における重要な作品として、今後も読み継がれていくことでしょう。

この作品を読むことで、私たちは戦争の悲惨さを認識すると同時に、人間の尊厳や美しさを再発見することができます。そして、過去の過ちを繰り返さないために、戦争の真実を深く理解する必要があることを学ぶことができるでしょう。

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