牽連犯

牽連犯とは

牽連犯（けんれんはん）とは、ある犯罪を実行する際の手段、またはその結果として、別の犯罪が成立する状態を指します。刑法54条1項後段に規定されており、たとえば、住居に侵入して窃盗を行う行為は、住居侵入罪と窃盗罪という二つの罪に触れるため、牽連犯となります。

この場合、それぞれの罪で処罰するのではなく、最も重い刑が定められている罪に基づいて処断されます。上記の例では、窃盗罪の方が重いため、窃盗罪の刑で処断され、住居侵入罪は別途処罰されません。この考え方を「吸収主義」と呼びます。これにより、複数の罪が成立する場合でも、処罰が一つにまとめられ、併合罪のように刑が加重されることはありません。

牽連犯の沿革と趣旨

牽連犯の規定は、日本独自の刑法制度であり、他の国ではあまり見られません。その起源は、スペイン刑法を参考にしたと考えられており、日本の刑法が制定される際に導入されました。しかし、韓国刑法には存在せず、改正の動きも見られています。

牽連犯の基本的な考え方は、本来であれば複数の罪が成立するところを、刑罰を科す上では一つの罪として扱うというものです。これは、複数の犯罪の間に密接な関係がある場合、最も重い罪で処罰すれば、その他の罪に対する処罰も実質的に満たされるという考えに基づいています。判例によれば、犯罪の手段と結果の関係が明確で、犯行の目的が単一である場合、複数の罪として処罰する必要はないとされています。

牽連犯の要件

牽連犯が成立するためには、いくつかの要件を満たす必要があります。まず、ある犯罪が別の犯罪の「手段」となる場合、その行為が通常、その犯罪の手段として用いられるものである必要があります。また、「結果」となる犯罪は、ある犯罪から当然に生じるものでなければなりません。単に偶然、手段と結果の関係にあるだけでは牽連犯とは認められず、両者の間に密接な因果関係が必要です。

さらに、犯人が主観的に数罪を手段と結果の関係で実行しただけでなく、それぞれの罪の性質上、通常手段と結果の関係がある必要があります。判例では、住居侵入と窃盗、強盗、殺人、強制性交等、傷害、放火などの犯罪、文書偽造とその行使、詐欺などの犯罪で牽連犯が認められています。

かすがい現象

「かすがい現象」とは、一つの手段となる犯罪から複数の犯罪が派生した場合に、手段となる犯罪と結果となる複数の犯罪がそれぞれ牽連犯の関係になることで、全体として一つの罪として扱われる現象を指します。例えば、住居に侵入して複数人を殺害した場合、複数の殺人罪と住居侵入罪がそれぞれ牽連犯となり、全体として最も重い罪で処罰されます。これにより、複数の殺人罪が併合罪として扱われるよりも、刑が軽くなることがあります。この現象は、住居侵入罪が「かすがい」の役割を果たしていることから、そのように呼ばれます。しかし、この現象は、かすがいとなる犯罪の存在によって、かえって処罰の範囲が狭まるという矛盾を生むため、反対意見もあります。

処断刑

牽連犯は、「その最も重い刑により処断」されますが、これは単に最も重い刑を定めている条文で処断されるだけでなく、その刑の下限を下回ることはできないという意味も含まれます。つまり、最も重い罪の法定刑の下限が、他の罪の法定刑よりも重い場合、その下限以上の刑を科す必要があるということです。

訴訟法上の取扱い

牽連犯は、観念的競合と同様に、科刑上一罪として扱われ、訴訟法上も同様の取扱いを受けます。

関連事項

• - 併合罪
• - 科刑上一罪
• - 観念的競合

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