犬山検査場新川検車支区

新川検車支区

新川検車支区は、愛知県清須市にある名古屋鉄道（名鉄）の車両基地です。名古屋本線の須ヶ口駅に隣接しており、現在の名鉄の車両基地の中では最も古い歴史を持っています。かつては「新川検車区」と呼ばれており、その名称は、かつての所在地名である「新川町」（2005年まで）に由来しています。この施設は、かつては新川工場として名鉄の車両保守体制の重要な一角を占めていましたが、組織再編を経て、現在は犬山検査場の傘下に位置づけられています。

施設概要

新川検車支区の敷地面積は約22,831平方メートルです。車両を停めておく留置線は最大78両を収容可能で、これは名鉄の車両基地としては最大の収容能力を誇ります。検査用のピットは3本設置されており、内訳は6両編成用が2本、2両編成用が1本です。車両のメンテナンスに必要な設備として、車輪の形状を整える車輪旋盤や、車両の下部から作業を行うためのドロップピット、重量物を吊り上げる10トンクレーンなどを備えています。これらの設備を活用し、日常的な検査業務に加え、事故などで損傷した車両の修理も行われています。敷地の広さでは舞木検査場や犬山検査場に次ぐ規模ですが、前述の通り留置線の規模は名鉄最大です。また、新川検車支区は名鉄の主要駅である名鉄名古屋駅から比較的近い場所に位置するため、列車の遅延や運休といった運行上のトラブルが発生した際に、運行ダイヤの復旧や車両の運用調整を行う上で重要な拠点としての役割も果たしています。

歴史

この車両基地は、名鉄の前身の一つである旧・名古屋鉄道が、1929年（昭和4年）に「新川車庫」として開設したのが始まりです。現在の名鉄が発足した後、組織名称は「新川工場」へと変更され、車両の検査施設としては「新川検車区」（正式には新川工場第一・第二検修職場）と呼ばれました。1949年（昭和24年）からは、主に名古屋本線など架線電圧1,500V区間を走行する車両の列車検査や月検査を担当するようになりました。

その後、名鉄の社内組織再編に伴い、新川工場は直轄の新川検車区の他、鳴海・茶所・喜多山の各検車区を管轄する組織へと発展しました。担当車両の範囲も広がり、1,500V区間の一般車両に加え、特急「北アルプス」に使用された8000系・8200系気動車、モノレールのMRM100形、閑散路線向けのレールバス（LE-Car、キハ10形・キハ20形）といった特殊な車両の検修も手がけました。

輸送力増強による車両増加に対応するため、1985年（昭和60年）には犬山検車区が新設され、名古屋本線系統の車両に関する列車検査や月検査業務の大部分は犬山へ移管されました。しかし、その後も1,500V区間向けの新造車両が納入された際の検査は新川検車区で行われたほか、レールバスを含む気動車各種の検査業務全般は引き続き担当しました。また、事故で損傷した車両の修繕や、瀬戸線所属車両の重要な検査実施時には喜多山検車区への人員派遣なども行いました。

さらにその後の組織再編により、新川工場の検車区管轄機能は犬山検査場へ移管され、「新川工場」の名称は廃止されました。新川検車区自体は犬山検査場の下部組織となりました。1997年（平成9年）に舞木定期検査場が開設されると、名鉄が保有する全ての車両の定期検査業務や、新造車両の納入時検査業務は舞木検査場に集約され、新川検車区の業務範囲はさらに縮小されました。

この時期には、空港線開業に合わせた施設改良工事も実施されました。1998年（平成10年）から始まったこの工事は、建屋や線路配置などを全て更新する大規模なもので、2005年（平成17年）に完了しました。改修後は、幹線系統の車両の列車検査や洗車業務を中心に、特急用車両の月検査も担当しています。

なお、1971年（昭和46年）以降、検修業務は名鉄と住友商事の共同出資で設立された名鉄住商工業に委託され、名鉄から出向した社員によって業務が行われていました。しかし、名鉄は2005年（平成17年）3月に名鉄住商工業を清算し、全ての業務を直営に戻しました。これに伴い、名鉄住商工業へ出向していた社員は全員名鉄へ復帰しています。

過去の災害

新川検車支区は、過去に二度、災害に見舞われ、施設だけでなく留置されていた車両にも被害が出ています。

一度目は1964年（昭和39年）2月に工場施設から火災が発生した際です。この火災により、検査のために入場していたモ700形706、モ750形760、ク2190形2192、5500系5509編成、電気機関車デキ300形304といった車両が被災しました。このうち、5500系5509編成のみは、損傷の激しかったモ5509の車体を新造することで修復され運用に戻りましたが、他の焼損した車両は修復が困難と判断され、廃車となりました。

二度目は2000年（平成12年）9月に発生した東海豪雨によるものです。大雨によって構内が冠水し、多くの留置車両が浸水の被害を受けました。この時被災した車両の中には5500系5505編成がありましたが、この編成は修復されることなく、同系列で初めて廃車されています。

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