犬山検査場豊明検車支区

豊明検車支区（とよあけけんしゃしく）

名古屋鉄道が愛知県豊明市阿野町に設けている車両基地で、正式名称を「豊明検車支区」といいます。かつては豊明検車区として知られていましたが、現在は犬山検査場に属する下部組織として位置づけられています。名古屋本線の豊明駅に隣接しており、名鉄の車両運用やメンテナンスにおいて重要な役割を担っています。

沿革

この車両基地は1999年（平成11年）に運用を開始しました。その設立背景には、名古屋鉄道の主要な車両工場の一つであった鳴海工場が、名鉄名古屋本線鳴海駅周辺の連続立体交差事業（高架化）に伴い移転することになった事情があります。鳴海工場が担っていた機能のうち、日常的な車両の点検・整備を行う「検車」部門を引き継ぐ形で、豊明検車支区が新設されました。ただし、車両の解体や大規模な修繕といった重度な検査・修繕機能は、愛知県岡崎市にある舞木検査場へ集約されることとなりました。

施設と機能

豊明検車支区の敷地面積は約8,937平方メートルです。施設内には、車両の日常的な検査を行うためのピットが2線整備されています。これらのピットはそれぞれ4両編成の車両に対応しており、主に走行距離や日数に基づいて定期的に実施される「列車検査」がここで行われています。また、敷地全体では最大で51両の車両を留置する能力を有しており、列車の運行計画に基づいた車両の配置や待機場所として機能しています。さらに、最大8両編成に対応できる自動車両洗浄装置も備わっており、車両の美観維持にも貢献しています。

日常的な列車検査や車両の留置機能に加え、新しく製造された鉄道車両が営業運転に入る前に、その性能や安全性を確認するための試運転基地としても利用されることがあります。

入出庫経路

豊明検車支区への車両の出入りは、隣接する豊明駅の1番線および2番線（主に名古屋方面行きホーム）と繋がった専用の線路を経由して行われます。そのため、車両が基地へ入庫する際は、原則として名古屋方面から接近し、これらのホームに進入してから専用線に入ります。

一方、豊橋方面への直接的な接続線路は設けられていません。しかし、豊橋方面へ出庫する必要がある車両については、豊明駅の1番線または2番線から一度引き上げ線に入り、スイッチバック操作を行います。その後、改めて豊橋方面行きのホームである3番線に入線することで、豊橋方面へ出発することが可能となっています。この特殊な入出庫経路を活用して、豊明駅を始発として豊橋方面へ向かう一部の列車（特に早朝の時間帯、例えば午前5時台に2本設定されている列車など）が運行されています。

また、名古屋市営地下鉄鶴舞線や名鉄豊田線で使用される100系電車が、検査を終えて所属路線に戻る際にもこの経路が使われます。豊明検車支区で検査を受けた100系は、このスイッチバック経路を経て3番線から知立駅へ向かい、そこから三河線を経由して豊田市方面の所属基地へ戻ります。

配置車両

豊明検車支区には、日常的な旅客用電車は常時配置されていません。しかしながら、線路保守作業で使用されるバラスト（線路に敷かれる砕石）を運搬するための事業用貨車であるホッパ車、ホキ80形が3両、この基地に配置されています。これらの貨車は、名鉄線内の安全な運行を支える保線作業に不可欠な存在です。

まとめ

豊明検車支区は、名鉄の車両保守体制において、鳴海工場から引き継いだ日常的な車両検査と車両の効率的な管理・運用を支える重要な拠点となっています。限定的な機能ではありますが、列車運行の安全性と安定性を維持するために欠かせない役割を担っています。

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