犬目宿

犬目宿（いぬめじゅく）

犬目宿は、旧甲州街道上にある宿場の一つで、日本橋から数えて21番目の位置にあります。この宿場は山梨県上野原市に位置し、同地域内では最も標高が高い場所に存在します。特にここから見る富士山は「犬目富士」と呼ばれ、多くの画家に描かれてきました。

歴史の背景

犬目宿は、犬目峠の近くにある小さな宿場町であり、一つの村が宿場そのものとなったと考えられています。この宿場の設立は1712年（正徳2年）にさかのぼり、当初の住民は現在の場所よりも約600メートル下の斜面に住んでいました。1756年には、宿駅として正式に認可され、「一村一宿」の形態で宿場が創設されました。1842年には、56戸の家があり、人口は255人でした。宿場は本陣が2つ、脇本陣は0、旅籠が15軒あったことが記録されています。

1970年2月12日には、宿場内で大火が発生し、強風にあおられて家屋が次々と焼失しました。この火災により、約14戸の民家と公民館、農協出張所などが全焼し、宿場の伝統的な建物の多くが失われました。

現在の犬目宿

現在の犬目宿には、公民館兼農産物直売所としての「犬目宿直売所」が中心にあります。宿場のシンボルとして、火の見櫓も立っています。犬目宿から見える富士山は「犬目富士」と称され、葛飾北斎や歌川広重などの著名な画家もこの地から富士山を題材にした絵を残しました。

犬目宿内には、「犬」を冠した地名に由来する「犬目兵助の墓」や「犬嶋神社」などが存在します。「犬目」という名称の由来については、地元の歴史研究家でも明確ではなく、謎が残っています。また、つげ義春の短編作品『猫町紀行』の舞台モデルとも言われています。

犬目兵助

犬目兵助は、1836年（天保7年）に起こった大飢饉の際に地元のために立ち上がり、米を買い占めていた商人と勇気を持って交渉した義民として知られています。兵助は、幕府からの追求を受け、各地で逃避生活を余儀なくされましたが、晩年に秘密裏に犬目に戻り、71歳まで生きたと言われています。彼の子孫は今もこの地に住んでいます。

犬嶋神社と宝勝寺

宿場内には犬嶋神社があり、家族62戸が氏子としてつながっています。また、街道に沿って位置する宝勝寺は、甲斐88ヶ所めぐりの第6番札所であり、多くの信仰を集めてきた古刹です。ここには高さ7メートル以上の一本堀の石像や120メートルの木彫り観音像が祀られており、地域の歴史と文化を感じることができます。

白馬不動尊と交通アクセス

街道沿いにある白馬不動尊は、行基上人にまつわる伝説が語られています。犬目宿へのアクセスは、上野原から富士急バスが利用でき、簡単に訪れることができます。犬目宿はその美しい自然や文化遺産を楽しむことができるスポットとして、今も多くの人々に愛されています。

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