犬神の悪霊

犬神の悪霊

概要

『犬神の悪霊』は、1977年に東映が公開したホラー映画です。1970年代のオカルト映画ブーム、特に『エクソシスト』や『オーメン』のヒット、そして前年の『犬神家の一族』の人気に便乗し、「日本初のオカルト映画」として製作されました。また、松竹が準備していた『八つ墓村』のメディア露出に対抗し、東映の岡田茂社長が「恐怖映画を作れ！」と号令をかけたことも製作のきっかけとされています。

ストーリー

物語は、ウラン技師の加納竜次が、同僚と共にウラン鉱脈を探査するために訪れた寒村から始まります。鉱脈を発見した喜びもつかの間、彼らは祠を破壊し、犬を轢き殺してしまいます。半年後、竜次は村長の娘である麗子と結婚しますが、その披露宴で同僚が発狂し自殺、もう一人の同僚は野犬に襲われ殺されてしまいます。麗子は、祠の破壊や犬神筋の女性が竜次に恋慕していたことを知り、犬神の祟りを信じ、精神を病んでいきます。現代医学での治療もできず、実家に戻った麗子は、犬神に憑かれたとされ、憑き物落としの責め苦の末に亡くなります。その後、村では井戸水を飲んだ者が死亡し、犬神憑きの家系とされていた垂水家の者が毒を盛ったと疑われ、村人によって皆殺しにされます。唯一生き残った隆作は、犬神憑きの儀式を行い、犬の首を刎ねますが、宙を飛ぶ犬の首に喉を噛み切られ絶命します。そして、その瞬間、磨子に犬神が取り憑き、村人への復讐が始まるという、凄惨な物語です。

スタッフ

監督・脚本は伊藤俊也が務めました。音楽は菊池俊輔、撮影は仲沢半次郎が担当しています。その他、美術、編集など、多くのスタッフが作品を支えました。また、人形製作に吉徳大光が協力しています。

キャスト

主人公の加納竜次を大和田伸也が演じ、その妻・麗子を泉じゅんが演じています。他に、鈴木瑞穂、小山明子、室田日出男、岸田今日子、白石加代子など、実力派俳優が出演しています。特に、剣持磨子役の長谷川真砂美は、2000人のオーディションで選ばれました。

製作

監督の伊藤俊也は、過去の作品でのトラブルから復活を期して本作に臨みました。当初は別の企画を提出しましたが、オカルトブームを受け、本作の企画が採用されました。製作費は当初5億円と報道されましたが、宣伝活動に力を入れた結果、公開を1ヶ月延期することになりました。

撮影

伊藤監督は、ハリウッド映画を意識した演出を豪語し、3ヶ月という長期間の撮影を行いました。

宣伝

「何が跳梁しているのか!? 不吉な死の数珠つなぎ! 」というキャッチコピーが使われ、観客の恐怖を煽りました。また、劇中の犬の首を切断するシーンは、動物愛護団体から抗議を受けましたが、これは宣伝効果を狙ったものでした。

評価

興行収入は同時期公開の『八甲田山』には及ばなかったものの、好成績を収めました。しかし、批評家からは、物語の脈絡を欠いたショックシーンの多さや、ラストシーンの解釈の難解さなどから評価が分かれています。

黒沢清監督は、ラストシーンについて「なんだかわからないけど衝撃的」と評しています。また、本作は、後のジャパニーズホラーの基礎を築いた作品として評価されています。

ビデオソフト

公開当初はVHSが発売されましたが、長らく視聴困難な状態が続いていました。2007年にDVDが発売され、2024年にはBlu-rayが発売されました。

サウンドトラック

2022年には、本編使用音源に加えて、未使用音源も収録されたオリジナルサウンドトラックが発売されました。

同時上映

同時上映は『新女囚さそり 特殊房X』でした。

その他

本作は、現代の都市生活者が地方の因習に触れ、恐怖を体験するという構図で、当時の社会問題を反映した作品とも言えます。

外部リンク

犬神の悪霊 - allcinema
犬神の悪霊 - KINENOTE

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