犬童一利

犬童 一利（いぬどう かずとし）は、1986年2月27日生まれ、神奈川県厚木市出身の日本の映画監督、映像作家です。

経歴

中央大学商学部を卒業後、一般企業での会社員として2年間勤務した経験を持ちます。その後、映画への情熱を抑えきれず、映像の世界へと転身し、本格的に映画監督を目指すこととなりました。この異色の経歴が、その後の作品世界に深みを与えているとも言えるでしょう。

監督としてのキャリアは、自主制作や短編映画からスタートしました。特に初期の作品である『SRS♂ありきたりなふたり♀』（2012年）は、性同一性障害をテーマにした意欲作として、氷見絆国際映画祭での優秀賞受賞をはじめ、関西クィア映画祭や香川レインボー映画祭でも上映されるなど、早い段階からその社会的な視点と表現力が注目を集めました。

2014年には長編デビュー作となる『カミングアウト』を発表。性的マイノリティをテーマにした本作は、第23回東京国際レズビアン&ゲイ映画祭および第26回香港レズビアン&ゲイ映画祭で上映され、国内外の映画祭で高い関心を集めました。また、同年には短編映画『あかぎれ』も両映画祭で上映されており、この時期から既に特定のテーマに対して深く切り込む姿勢が見受けられます。

全国規模での劇場公開は、2016年の『つむぐもの』で実現しました。俳優の石倉三郎と韓国の女優キム・コッピが主演を務めた本作は、国境を越えた人間的な交流を描いた作品として評価され、第19回上海国際映画祭に正式出品、第11回大阪アジアン映画祭ではコンペティション部門に出品されました。

さらに2018年には、ベストセラー作家である森沢明夫の小説を原作とした『きらきら眼鏡』を監督。主演に金井浩人を迎え、池脇千鶴、安藤政信ら実力派俳優陣が集結したこの作品は、人の心の機微を繊細に描き出し、観る者に温かい感動を与えました。本作もまた、第21回上海国際映画祭に正式出品されるという快挙を達成。これにより、犬童監督は『つむぐもの』に続いて2年連続で世界12大映画祭の一つである上海国際映画祭に作品を送り出すこととなり、国際的な舞台での評価を確固たるものとしました。また、地域活性化に貢献した作品を表彰する第9回ロケーションジャパン大賞では審査員特別賞を受賞しています。

監督作品（一部）

長編映画以外にも、犬童監督は精力的に短編映画やその他の映像作品を手掛けています。

『カミングアウト』（2014年）- 長編デビュー作、脚本も担当
『早乙女4姉妹』（2015年）- 脚本も担当
『つむぐもの』（2016年）- 全国デビュー作
『きらきら眼鏡』（2018年）- 森沢明夫原作
短編映画『気づかなくてごめんね』（2019年）- 主演:石倉三郎
短編映画『18歳』（2021年）
短編映画『この町の』（2021年）
短編映画『わたし、あなた』（2023年）- 脚本も担当。ブラジルの映画祭Cinemazで「the honorable mention award」を受賞するなど、海外での上映・評価も得ています。

また、ドラマ「AKBラブナイト 恋工場」（2016年）の一編や、Creepy Nuts|Creepy_NutsのMV『教祖誕生』（2017年）、Good ComingのMV『君が笑えればいい』（2015年）なども監督しており、活動の幅は多岐にわたります。

プロデュース作品

監督業と並行して、プロデューサーやラインプロデューサーとしても複数の作品に携わっています。

『JUDGEMENT』（2012年 辻岡正人監督）- プロデューサー。氷見絆国際映画祭で優秀賞を受賞。
『老獄-OLD PRISON-』（2012年 辻岡正人監督）- アシスタントプロデューサー。
『ヲ乃ガワ-WONOGAWA-』（2014年 山口ヒロキ監督）- プロデューサー。
『紅破れ』（2014年 横川康次監督）- プロデューサー。
『死んだ目をした少年』（2015年 加納隼監督）- ラインプロデューサー。
『トリノコシティ』（2017年 山口ヒロキ監督）- プロデューサー。

これらの活動からも、犬童一利監督が日本のインディーズ映画界において、制作・発表の両面で重要な役割を担っていることが伺えます。社会的なテーマや人間の内面に寄り添う視点を持ちながら、国内外で評価される作品を生み出し続けている、今後の活躍が期待される映画監督の一人です。

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