つむぐもの

映画『つむぐもの』

概要

2016年3月に日本で公開された本作は、犬童一利が監督を務め、俳優の石倉三郎と韓国人女優のキム・コッピが主演を飾った人間ドラマです。国境、文化、世代、そして価値観といった様々な違いを持つ二人が、介護という経験を通して互いに理解を深め、かけがえのない絆を育んでいく様子が描かれています。物語の舞台は、日本の福井県丹南地域、特に越前和紙の伝統が息づく土地と、韓国の歴史的な遺産が点在する扶餘郡（プヨぐん）にまたがっており、それぞれの美しい風景が物語に深みを与えています。興味深い点として、映画のプロモーションに使用されたチラシや全国共通前売券には、撮影地の名産である越前和紙が実際に用いられました。

あらすじ

韓国からワーキングホリデー制度を利用して日本へやってきた若き女性、ヨナ。当初の予定では、福井県で越前和紙作りに携わるはずでした。しかし、一人で暮らす和紙職人、剛生が突然脳腫瘍で倒れてしまい、事態は一変します。本来の目的とは異なり、ヨナは図らずも彼の介護を引き受けることになります。ところが、生来の頑固さからか、剛生は他人の助けを頑なに拒み、「他人の手なんか、絶対に借りるもんか」と悪態をつくばかり。言語も習慣も異なる二人の共同生活は、戸惑いと反発から始まります。この困難な状況の中で、ヨナは剛生の心を開き、信頼関係を築くことができるのでしょうか。そして、介護という行為を通じて、二人の間にどのような変化が訪れるのか、物語はその過程を丁寧に追っていきます。

キャスト

本作を彩る主要キャストには、頑固な越前和紙職人・剛生を演じる石倉三郎、そして介護をすることになる韓国人女性・ヨナに扮するキム・コッピが名を連ねています。彼らを取り巻く人々として、新人介護士の涼香を吉岡里帆が、見習い和紙職人の宇野を森永悠希が演じています。他にも、施設長の山下を宇野祥平、介護福祉士の蓉子を内田慈、和紙組合理事長の石川を日野陽仁など、実力派俳優たちが脇を固め、物語にリアリティを与えています。

主題歌・スタッフ

映画の情感を一層深める主題歌は、城南海が歌う「月の砂漠」です。この楽曲は、作詞をもりちよこ、作曲をユ・ヘジュンが手掛け、編曲をただすけが担当しました。2015年11月にリリースされた城南海のアルバム『尊々加那志 〜トウトガナシ〜』に収録されています。

制作スタッフには、脚本の守口悠介、企画・製作統括の梅田一宏、エグゼクティブプロデューサーの吉田ときおと前田紘孝、プロデューサーの前信介らが参加しています。撮影は伊集守忠、照明は大久保礼司、録音は根本飛鳥が担当し、美術は吉川都和、衣装は中橋じゅん、ヘアメイクは堀奈津子が手掛けるなど、それぞれの部門の専門家たちが作品世界を創り上げています。制作プロダクションはソウルエイジ、配給・宣伝はマジックアワーが担いました。

映画祭出品

本作は、公開に先立ち、第11回大阪アジアン映画祭のコンペティション部門に出品され、国際的な注目を集めました。

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