犬鳴山 (大阪府)

犬鳴山：豊かな自然と歴史が息づく霊峰

大阪府泉佐野市に位置する犬鳴山は、燈明ヶ岳（標高558m）を含む山域全体の総称であり、単独の山ではありません。金剛生駒紀泉国定公園に指定されるなど、豊かな自然に恵まれたこの地は、古くから人々に親しまれてきました。特に、犬鳴川渓谷沿いの景観は「大阪府 緑の百選」にも選ばれており、地元住民に深く愛されています。

犬鳴山温泉は、関西国際空港へのアクセスが良好なことから、近年知名度が向上しました。温泉郷として賑わいを見せ、多くの観光客が訪れています。

絶景の滝と修験道の歴史

犬鳴山には、大小48もの滝が存在し、その中でも七飛瀑（両界の滝、塔の滝、弁天の滝、布引の滝、古津喜の滝、千寿の滝、行者の滝）は特に有名です。特に、行者の滝は古くから修験者たちが滝行を行う聖地として知られ、現在でも一般の人々が体験できる機会が提供されています。（有料、要予約）

犬鳴山の名前の由来は、七宝瀧寺の山号「いぬなきさん」にまつわる伝説に遡ります。紀州の猟師が犬と共に狩りをしていた際、犬の鳴き声によって猟師の命を狙う大蛇を退治したという物語です。この伝説に感銘を受けた宇多天皇が、七宝瀧寺に「いぬなきさん」の勅号を賜ったと伝えられています。地元では現在も「いぬなきさん」と呼ぶことが一般的です。一方、温泉郷では「いぬなきやま」と呼び、「犬鳴山温泉」として親しまれています。

葛城修験道の聖地

七宝瀧寺は、真言宗犬鳴派の本山であり、役小角が開山したと伝えられています。661年の開山は、大峰山山上ヶ岳よりも6年も前という歴史的な事実です。古くは犬鳴山を含む金剛・和泉山系全体を「葛城」と呼び、犬鳴山は葛城二十八宿修験道の根本道場として重要な役割を担っていました。近世初頭の記録によると、毎年5月に高野山から葛城を巡行する先達たちは、犬鳴山に7日間も滞在し、柴焼護摩を修していたとあります。このことは、犬鳴山が修験道においていかに重要な地位を占めていたかを示しています。南北朝時代には六坊が創建され、室町時代には二十坊もの坊舎を有する隆盛を極めましたが、豊臣秀吉の根来攻めによって大きな被害を受けました。その後、岸和田城主からの寄進を受けて復興し、現在の姿となりました。

アクセスと周辺情報

犬鳴山へのアクセスは、大阪府道・和歌山県道62号泉佐野打田線を利用できます。この道路の府県境付近は、一部ドライバーの間で「犬鳴峠」と呼ばれていますが、正式名称ではありません。（正式名称の犬鳴峠は福岡県宮若市にあります）。

泉佐野市には、犬鳴山の義犬伝説をモチーフにしたイメージキャラクター「イヌナキン」も存在し、地元に愛されています。

犬鳴山は、豊かな自然、歴史、そして伝説が織りなす魅力的な場所です。訪れる際には、雄大な渓谷美と歴史的建造物、そして地元の人々の温かさを感じてみてください。

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