犯罪人引渡し

犯罪人引渡しについて

犯罪人引渡し（はんざいにんひきわたし）は、他国から要請を受けて自国にいる犯罪者を引き渡し、相手国において処罰を行うための国際的な法的手続きです。この制度は、逃亡した犯罪者が他国で逮捕され、自国へ帰還することなく処罰されるのを防ぐ役割を果たします。

概要

犯罪人引渡しには、基本的に他国からの請求に応じる義務はありません。引渡しを受けた国は、自国の管轄権を放棄し、請求国の刑事管轄権に従うことになります。このプロセスは、いくつかの国際法や条約に基づいて行われ、相互主義や国際的な礼譲の原則が存在します。

引渡しが行われるためには、まず引渡し対象となる犯罪が、請求国と被請求国の両国において同様に重罪として扱われなければなりません。この要件は「双方可罰性の原則」と呼ばれ、たとえば、殺人や窃盗などの犯罪が該当します。また、引き渡された犯罪者は、引渡しを理由とした犯罪以外の理由で処罰されないことが求められ、これを「特定性の原則」といいます。

引渡しの要件

犯罪人引渡しの理由となる犯罪は、引渡しが要求された時点において、請求国と被請求国双方の法律で重罪とみなされるものであることが求められます。したがって、双方の法律の基準を満たさない場合、引渡しは行われません。しかし、既に訴追を受けた犯罪についての引渡し請求は、たとえ双方可罰性を満たしていても、拒否されることになります。

引渡し拒否の理由

犯罪人引渡し請求を受けた国は、他国からの要請に応じる義務が基本的に存在しないため、様々な理由で引渡しを拒否することができます。

自国民不引渡し

多くの国では、自国民の引渡しを禁じる法律や条約が存在します。例えば、ブラジルは自国民を他国へ引き渡すことを憲法で禁止しており、必要に応じて代理処罰が可能です。ただし、自国民を引き渡すことを認める条約も存在し、日米犯罪人引渡し条約等では裁量により応じられるケースもあります。

政治犯不引渡し

政治犯については、ほとんどの国で引渡しが行われない慣習が存在します。これは、国際的な政治的対立に無関係であろうとするための政策的理由によります。最終的に、政治犯を引き渡さないことは国家の義務とされる見解も一般的です。

まとめ

犯罪人引渡しは国際的な司法協力の一環として機能していますが、その実施には明確な要件があり、また、各国の法制度や外交関係に基づく制約が存在するため、必ずしもスムーズに進むとは限りません。犯罪人引渡しの制度は重要な国際法の一部であり、それぞれの国が採用している原則や慣行に影響を受けていることを理解することが求められます。

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