相互主義
相互主義(そうごしゅぎ、
英語: principle of reciprocity)とは、国際関係や国内法において、相手国や
外国人の待遇を決定する際に、相手の出方や自国民に対する待遇を考慮する考え方です。互恵主義、レシプロシティとも呼ばれます。
相互主義の定義
相互主義は、主に以下の3つの側面を持ちます。
1.
外交・通商における相互主義: 相手国が自国に対して行う待遇と同様の待遇を、自国も相手国に対して行うという考え方です。これにより、二国間関係の公平性やバランスを保つことが期待されます。
2.
外国人の権利における相互主義: 外国人の
権利を認める際に、その
外国人の本国が自国民に対して同等の
権利を認めていることを条件とする考え方です。これにより、
権利の相互性を確保し、不均衡な状況を避けることができます。
3.
保険における相互主義: 保険事業の経営において、相互組織の団体を保険者とすることが望ましいとする考え方です。保険契約者間の相互扶助の精神に基づき、公正な運営を目指します。
貿易における相互主義
貿易における相互主義は、国家間の貿易関係において、互いに利益となるような条件で取引を行うという考え方です。経済学者の
カール・ポランニーは、共同体間の互酬関係が交易の形をとることがあると指摘し、相互的な取引が当事者間を結びつける効果を持つと論じました。一方、国家間の管理貿易は、条約に基づき、等価物の遵守を原則としていました。
貿易政策における相互主義
政治経済学者のロバート・トレンズは、
1833年に発表した著作で、貿易政策の原則として互恵主義を提唱しました。トレンズは、リカードの国際貿易論を基に、一方的な
自由貿易ではなく、互恵的な
自由貿易を主張しました。
1860年の英仏通商条約(コブデン条約)は、
自由貿易政策における互恵主義の代表的な例です。
法学における相互主義
法学においては、
外国人の
権利を認める際に、その
外国人の本国が自国民に対して同等の
権利を認めていることを条件とする考え方があります。
梅謙次郎は、欧米の法制を分析し、条約相互主義や法律相互主義といった概念を提示しました。
日本法における相互主義の規定
日本国国内法では、
国家賠償法や
民事訴訟法において、相互主義の規定が設けられています。例えば、
国家賠償法では、外国で日本人が外国政府に同様の請求ができる場合に限り、その国の
外国人も国賠法上の請求ができるとしています。また、
出入国管理及び難民認定法では、外国が日本人の上陸を拒否する場合、同一の事由により当該
外国人の上陸を拒否できると規定しています。
参政権における相互主義
参政権における相互主義は、
外国人に参政権を付与する際に、その
外国人の本国が自国民に対して同様の
権利を認めていることを条件とする考え方です。
EU加盟国における相互主義
EU加盟国においては、
マーストリヒト条約に基づき、EU市民に対して相互に参政権を付与することが義務付けられています。ただし、EU市民とそれ以外の
外国人の待遇の差が問題となることもあります。
韓国における相互主義
韓国では、2005年に永住
外国人に対する地方参政権付与法案が可決されました。以来、在日韓国人および韓国政府が相互主義を主張し、日本政府に対して
外国人の参政権付与を要請しています。
土地所有権における相互主義
土地所有権における相互主義は、
外国人に土地所有権を認める際に、その
外国人の本国が自国民に対して同様の
権利を認めていることを条件とする考え方です。
日本における規制
日本では、
外国人土地法により、日本人・日本法人による土地の
権利の享有を制限している国に属する
外国人・外国法人に対して、日本における土地の
権利の享有について同様の制限をかけることができると定めています。ただし、敗戦後、この法律に基づく政令は制定されていません。
参考文献
熊谷次郎 「
自由貿易と互恵主義 : コブデン・クラブの一パンフレッ トの周辺」
一橋大学社会科学古典資料センター年報、1992年3月31日。
アラン・コーエン、デビッド・ブラッドフォード 『影響力の法則』高嶋薫・高嶋成豪訳、税務経理協会、2007年。
河合康夫「ロバート・トレンズの互恵主義論の形成過程をめぐって」『武蔵大学論集』第54巻第2号、2006年11月。
カール・ポランニー 『人間の経済 1 市場社会の虚構性』
玉野井芳郎・
栗本慎一郎訳、
岩波書店 / 『人間の経済 2 交易・貨幣および市場の出現』
玉野井芳郎・中野忠訳、
岩波書店、2005年。
大河純夫 「
外国人の私権と
梅謙次郎」立命館法学、1997年5号(255号)。
田中宏、
金敬得編 『日・韓「共生社会」の展望―韓国で実現した
外国人地方参政権』新幹社、2006年。
関連項目
最恵国待遇
内国民待遇
外国人参政権
相互会社
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自由貿易協定