狐の嫁入り行列

新潟県阿賀町「狐の嫁入り行列」：伝説と幻想が織りなす祭り

新潟県東蒲原郡阿賀町津川地区で、毎年5月3日に開催される「狐の嫁入り行列」は、地元に伝わる狐の嫁入り伝説を基にした、幻想的なお祭りです。この祭りは、単なるイベントではなく、地域の歴史や文化、そして人々の願いが込められた、特別な意味を持っています。

麒麟山の伝説と狐火

津川地区のシンボルである麒麟山は、かつて多くの狐が棲んでいたと伝えられています。戦国時代には津川城が築かれましたが、その険しさから「狐戻城」とも呼ばれていました。この山では古くから狐火（鬼火）と呼ばれる光が見られ、津川の狐火は出現率が世界一とも言われていたそうです。現在ではほとんど見られなくなりましたが、麒麟山と狐火にまつわる数多くの物語が語り継がれています。

嫁入り行列の由来

かつてこの地域では、嫁入りは夕方から夜にかけて行われていました。提灯を下げて嫁入り先へ向かう行列が、麒麟山の峠を越える際に、提灯の明かりと狐火が重なって見えたことから、「狐の嫁入り行列」という言い伝えが生まれたと言われています。

祭りとしての「狐の嫁入り行列」

この言い伝えや民話を下地とし、1990年5月3日に第1回の「狐の嫁入り行列」が開催されました。当初は新潟県の観光キャンペーンの一環として始まったものですが、その幻想的な構成が注目を集め、現在では津川地区の人口を大きく上回る観光客が訪れるようになりました。

祭りの見どころ

祭りのハイライトは、夕刻に住吉神社を出発する、狐に扮した花嫁を中心とした108人の行列です。江戸時代の嫁入りを再現したこの行列は、会津街道を練り歩き、ユニークな狐の動作を織り交ぜながら進みます。行列が小休止する際には、保育園児が扮した子狐によるお祝いの踊りが披露されます。

行列が麒麟山麓の常浪川に架かる城山橋に到着すると、橋の上で花嫁と花婿が出会います。川の中に特設された水上ステージでは、結婚式と披露宴が執り行われ、幻想的な雰囲気に包まれます。披露宴が終わると、花嫁と花婿は渡し舟に乗って川を渡り、霞がかった麒麟山へと消えていきます。そして、山には狐火が灯り、物語のクライマックスを迎えます。

町全体が狐色に染まる

第2回目以降は、参加者に狐の顔を模ったメイクを施して行列を行うようになりました。現在では、行列に参加する人々だけでなく、観光客にも狐のメイクが施され、津川駅の駅員やインターチェンジの料金所職員、さらには祭りの警備にあたる警察官までが狐の顔になるという、ユニークな光景が見られます。

狐の嫁入り屋敷

津川市街地には、祭に関連した資料展示や体験を行う施設「狐の嫁入り屋敷」があります。ここでは、祭りの歴史や文化に触れることができ、より深く「狐の嫁入り行列」を楽しむことができます。

「狐の嫁入り行列」は、単なる祭りではなく、地域の歴史や文化、そして人々の願いが込められた、特別なイベントです。幻想的な光景と、地域の人々の温かいおもてなしは、訪れる人々を魅了し、忘れられない思い出となるでしょう。

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