狐偃

狐偃（こ えん）についての詳細

狐偃（こ えん）は、中国の春秋時代において、晋の政治家として名を馳せた人物です。彼の字は子犯（しはん）であり、時には舅犯（きゅうはん）または咎犯とも称されました。

略歴

狐偃の父、狐突は狄の出身でありながら、先見の明を持ち、晋の武公のもとで仕官しました。武公の子供の献公の代になり、献公の公子たちの中から、重耳が覇者となる器を持つと見込まれました。この重耳は後に文公として知られることになります。狐偃はその重耳に仕えるために兄の狐毛とともに仕官しました。

しかし、重耳が他の家臣によって君主の座につこうとした際、狐偃はそのことを不吉と捉え、「君主を殺した家臣たちの手に招かれて君主の座につくのは不吉です」と言って重耳を抑えました。その結果、重耳は晋を離れ、19年間にわたり放浪する運命を辿ることになります。

放浪時代の出来事

重耳が五鹿の地を通過中、飢えに苦しむ一行は地元の農民から食糧を乞いましたが、農民からは土だけが差し出されました。怒った重耳は農民を処罰しようとしましたが、狐偃は「民が土を献じたのです。公子は必ずこの地を手に入れるでしょう」と語り、冷静さを保ちました。

次に、斉に到着した重耳一行は桓公に手厚くもてなされましたが、重耳が桓公の死後、斉に留まろうとした時、狐偃は「私たちは覇者の家臣になりたくて公子についてきたのであって、斉の陪臣になるためではありません」と主張しました。そして、重耳の妻である斉姜や趙衰と共に酔った重耳を馬車に乗せ強制的に斉を脱出しました。

その時、重耳は狐偃に対して怒りを露わにし、自身が成功しなければ彼を殺すと告げましたが、狐偃は「私が殺されても公子が成功すれば本望です」と冷静に返しました。このやりとりにより重耳は家臣たちの意志の固さを知り、帰国に向けた決意を強めました。

覇者の家臣としての役割

重耳が帰国し、文公となった際、狐偃は彼の政権支援を続けました。周の襄王が叔帯の乱を避けて亡命した際、狐偃は「君は王を助けて民に義を示すべきです」とアドバイスしました。文公はこれに従い、兵を率いて周王室の乱を平定しました。

この時の功績により、晋は王室から温・原などの重要な地を賜り、のちの晋の繁栄の基盤が築かれました。また、諸侯に先駆けて周王室を支援し、義を示したことで、文公の名は広く知れ渡ることとなりました。

狐偃はその後も文公を支え続け、晩年に至るまで、その政治的手腕と忠誠心は高く評価されています。彼の存在があったからこそ、重耳は春秋時代の名君に成長したのです。

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