狼の口 〜ヴォルフスムント〜

狼の口 〜ヴォルフスムント〜

『狼の口 〜ヴォルフスムント〜』は、久慈光久による日本の漫画作品です。エンターブレイン発行の『Fellows!』から連載が開始され、誌名変更後の『ハルタ』で完結しました。本作は、筋肉少女帯のアルバム『最後の聖戦』に収録されている「タチムカウ -狂い咲く人間の証明-」からインスピレーションを受けています。

あらすじ

舞台は中世のアルプス山脈。ドイツとイタリアを結ぶ要衝、ザンクト・ゴットハルト峠を巡る物語です。峠の権益を持つウーリ、シュヴァイツ、ウンターヴァルデンの三邦は、自由を守るため盟約者同盟を結成します。しかし、オーストリア公ハプスブルク家による占領と圧政が始まり、同盟は独立をかけて抵抗を続けます。

ハプスブルク家は、ザンクト・ゴットハルト峠に堅牢な関所『狼の口（ヴォルフスムント）』を築き、三邦の民衆を閉じ込めます。ヴォルフスムントの代官ヴォルフラムは、悪魔的な洞察力で密行者を見つけ、残虐に処刑します。同盟の闘士たちは、英雄ヴィルヘルム・テルの息子ヴァルターを旗頭に、来るべき反乱の準備を進めます。

1315年10月15日、ついにヴォルフスムントへの攻撃が開始されます。ヴォルフラムの悪意が具現化したような要塞を、多くの犠牲を払いながらも同盟団は陥落させます。ヴォルフラムは捕えられ、串刺し刑に処されます。その後、三邦で反乱が勃発。苦戦を強いられながらも、モルガルテンの戦いでハプスブルク軍を打ち破り、スイスは独立を守り抜きます。

登場人物

ヴォルフラム: ハプスブルク家から派遣されたヴォルフスムントの代官。優男風の容姿とは裏腹に、拷問や処刑を楽しむサディスト。密行者を見抜く能力に長けています。
ブルクトー: ヴォルフスムントに駐留する騎士。盟約者団に恨みを抱き、防衛戦で奮戦しますが、ヴォルフラムに見捨てられ、盟約者団に討たれます。
レオポルト: オーストリア公の弟。三邦を占領統治し、ヴォルフラムを信頼しています。モルガルテンの戦いで大敗を喫し、スイス再征服の夢は叶いませんでした。
フリードリヒ: レオポルトの兄でオーストリア公。神聖ローマ皇帝を目指しています。
ヴァルター: 三邦の英雄ヴィルヘルム・テルの息子。弓の腕前とクライミング技術に優れ、盟約者団の旗頭としてヴォルフスムント攻城戦を指揮します。
グレーテ: ヴォルフスムントに隣接する宿屋の女将。盟約者団を支援し、密行者たちを匿います。
ヒルデ: 盟約者団の戦士。「シュヴァイツの切り裂きヒルデ」の異名を持ち、二刀流で戦います。ヴォルフラムに不意打ちされ、命を落とします。
ヘルマン: 盟約者団のまとめ役。ウーリ民会議長を務め、「ウーリのかしら」と呼ばれています。
ハインツ: 盟約者団のシュヴァイツ代表。ヴォルフラムの処刑執行人も務めました。モルガルテンの戦いで戦死します。
ロルフ: 盟約者団のウンターヴァルデン代表。
ユヴェール: イタリア側から決起の準備完了を伝えに来た少女。
ヨハンナ: 主人の命令で紋章を届けた女性。関所で捕まり死亡します。
クルト: ウンターバルテンの山羊飼い。凧に乗って侵入を試みましたが、捕えられて死亡しました。
バルバラとアルベルトの兄妹: 幼い頃ヴォルフラムに両親を殺されました。

用語

ギリシア火: イタリア側盟約者団が入手した焼夷兵器。水をかけても燃え広がります。
手砲（ハンドゴン）: イタリア側盟約者団の新兵器。威力は高いものの、使用者も爆散する危険な兵器です。
マンゴネル: ヴォルフスムント攻城戦で使用された投石機。

評価

多根清史は、ヴォルフラムの残虐な処刑を「倒錯した快感」と評し、ヴォルフラムが「尻から口まで串刺しの刑」で死に行くさまを「爽やかな余韻を残す前代未聞の読後感」と評しています。

書誌情報

久慈光久『狼の口 〜ヴォルフスムント〜』 エンターブレイン発行、KADOKAWA〈ビームコミックス〉、全8巻
* 久慈光久『狼の口 revised edition』 KADOKAWA〈青騎士コミックス〉、全4巻

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