猊鼻渓

猊鼻渓（げいびけい）

猊鼻渓は、岩手県一関市東山町に位置する、砂鉄川がつくり出した壮大な渓谷です。1925年に国の名勝に指定され、さらに日本百景にも選ばれるなど、その景観の美しさは広く認められています。

概要

砂鉄川は、鷹ノ巣山を源流とし、古生代の石灰岩層を侵食してこの渓谷を形成しました。約2キロメートルにわたって続く峡谷は、数十メートルから百メートルにも及ぶ絶壁が連なり、訪れる人々を圧倒します。春は藤、秋は紅葉の名所として知られ、四季折々の自然が織りなす色彩豊かな風景は、訪れる人々を魅了します。

その名の由来は、渓谷の上流部にある獅子の鼻に似た鍾乳石からきています。渓谷には巨石や奇岩が点在し、周囲は赤松などの広葉樹林に覆われ、自然豊かな景観を作り出しています。げいび観光センターによる舟下りでは、船頭の歌う「猊鼻追分」を聞きながら、ゆったりと渓谷美を堪能できます。

見どころ

渓谷内には、数々の見どころがあります。

鏡明岩: 大きな鏡を立てかけたような岩。
藤岩: 藤のつるが絡みついた岩。
凌雲岩: 顔のように見える岩。
あまよけの岩: 水面に張り出し、雨宿りに使われたと伝えられる岩。
夫婦岩: 「壮夫岩」と「少婦岩」が並び立つ。
錦壁岩: 紅葉の季節には赤や黄色の葉で覆われる。
馬鬣岩: 岩の稜線にある松の木々が馬のたてがみの様に見える。
獅子ケ鼻: 猊鼻渓の名前の由来となった岩。
仙帯岩: 暗色部が帯状に見える岩。
大猊鼻岩: 舟下りの最奥にある大岩壁。

歴史

かつて、その美しさは地元の人々にもあまり知られていませんでした。旧藩時代には、藩吏の探勝の際に地方民に多大な負担がかかったため、積極的に紹介されることがなかったためです。

しかし、佐藤猊巌が父の遺志を継ぎ、師である岡鹿門を招いて猊鼻渓の開発を唱え、多くの文人墨客が訪れるようになりました。

訪れた主な文人墨客

岡鹿門（漢学者）
宮沢賢治（詩人、童話作家）
田山花袋（小説家）


佐藤猊巌は、砂鉄川の渓口に発電所が設置される計画を知り、渓谷の保護のために開発運動を展開しました。

名称の由来

猊鼻渓という名前がいつ頃から使われるようになったのかは定かではありません。しかし、関養軒や蓑虫山人らがその美しさを世に広めたことが知られています。明治35年から40年頃にかけて、現在の「猊鼻渓」という名称が定着したと考えられています。

伝説

獅子ヶ鼻には、悲しい伝説が残されています。孝行息子であった三太郎を慕う娘小夜が、身を投げたという物語です。川砂に混じる黒い砂鉄は小夜の肌から洗い落ちたもの、渓谷のカワスズメは彼女の化身であると伝えられています。

交通

JR大船渡線「猊鼻渓駅」下車
東磐交通バス「げいび渓入口」下車

周辺情報

東山和紙「紙すき館」
幽玄洞
石と賢治のミュージアム

猊鼻渓は、自然の美しさと歴史、伝説が織りなす、魅力あふれる観光地です。ぜひ一度、訪れてみてください。

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