猪初男

猪 初男

日本の医学界に多大な貢献をした耳鼻咽喉科学者であり、医師。

生涯

大正3年（1914年）10月9日、新潟県東蒲原郡上条村大字両郷（現在の阿賀町両郷）に生まれる。新潟師範学校附属小学校を経て、昭和6年（1931年）3月には新潟中学校を4年で修了（四修）。その後、昭和9年（1934年）3月に新潟高等学校を卒業し、昭和13年（1938年）3月に新潟医科大学を卒業した。

軍務経験

大学卒業後の昭和14年（1939年）7月、海軍軍医中尉に任官。海軍軍医学校にて教官を務め、全国から集まる軍医の育成に携わった。海軍省での勤務中に太平洋戦争が終結し、最終階級は海軍軍医少佐となった。戦後は復員省に勤務した。

医療・研究者としての歩み

昭和21年（1946年）4月、旧海軍軍医学校第二付属病院を前身とする国立東京第二病院に招かれ、耳鼻咽喉科医長に就任。昭和24年（1949年）1月には新潟医科大学より医学博士の学位を取得した。

昭和39年（1964年）7月、母校である新潟大学医学部耳鼻咽喉科学教室の第5代教授に着任。医学教育への深い関心から、昭和43年（1968年）2月からの6ヶ月間、文部省の在外研究員として欧米の医学教育制度を視察し、その後の教育・研究活動に活かした。昭和48年（1973年）4月には新潟大学医学部附属病院の第13代病院長に就任し、医療行政の責任者としても手腕を発揮した。また、昭和52年（1977年）11月には台湾の台北で開催された中華民国耳鼻咽喉科医学会で講演を行うなど、国際的な交流も行った。

大学運営への貢献

昭和54年（1979年）10月、新潟大学の第8代学長に就任。これに伴い、昭和55年（1980年）3月に新潟大学医学部耳鼻咽喉科学教室教授の職を退いた。学長として大学運営の重責を担い、昭和58年（1983年）10月には学長に再任されるなど、2期にわたり大学の発展に尽力した。

退官後の活動と晩年

昭和60年（1985年）10月に新潟大学を退官し、同年11月には新潟大学名誉教授の称号を授与された。退官後も医学界への貢献を続け、昭和62年（1987年）12月には日本口腔･咽頭科学会の初代理事長に就任するなど、精力的に活動した。

平成11年（1999年）9月11日午前0時31分、国立病院東京医療センター（旧 国立東京第二病院）にて、急性心不全のため84歳で死去。

業績

研究者としては、神経耳科学の分野に加え、扁桃の研究に特に力を注いだ。当時、扁桃は単なる炎症部位と見なされがちであったが、いち早く免疫学の視点を導入し、扁桃が全身の免疫システムにおいて果たす役割を探求することで、この分野に新たな地平を切り開いた。

表彰・栄典・称号

その長年の功績に対し、多くの表彰や栄典が贈られた。

昭和52年（1977年）11月3日には、扁桃と全身疾患に関する研究が高く評価され、第30回新潟日報文化賞（科学部門）を受賞。
昭和61年（1986年）11月3日には、勲二等旭日重光章を受章。
* 死去当日である平成11年（1999年）9月11日には、正三位が追贈された。

また、新潟大学名誉教授に加え、日本気管食道科学会名誉会員、日本顔面神経研究会名誉会員などの称号も授与されている。

親族

弟の猪貴義は家畜育種学者であり、岡山大学名誉教授を務めた。

著作物

医学専門書や論文など、多くの著作を残している。主な著書には『めまい 診断と治療』、『小児耳鼻咽喉科トピックス』、共著の『耳鼻咽喉科学』、『耳鼻咽喉科外来診療』などがある。訳書や監修書も手がけ、医学知識の普及と発展に貢献した。その学術論文はCiNiiにも多数収録されている。

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