猪爪義治

猪爪 義治

埼玉県行田市出身の元プロ野球選手（投手）。1978年5月11日生まれ。現役引退後は、少年野球の指導者として後進の育成に力を注いでいる。

高校時代

埼玉工業大学深谷高等学校に進学。野球部では控え投手だったが、横手投げとオーバースローを投げ分ける独特のスタイルで、当時の直球の球速は130km/h台ながら注目を集めた。この変則的な投球で、2年秋と3年春には県大会ベスト4に進出。3年夏の県大会では初戦で1失点完投（5回コールドゲーム）を記録したが、チームは5回戦で敗退した。

異色の経歴からプロ入りへ

高校2年時に父親を亡くした猪爪氏は、卒業後、土木関係の仕事に就いた。しかし、野球への未練を断ち切れず、高卒3年目を迎える前に、勤めていた会社の社長から「未練があるならウチに来て野球を続けろ」と誘いを受ける。この誘いを機に、うどん店でのアルバイトをしながら、知人のスポーツインストラクターが作成した練習メニューに基づき、実家近くの公園でトレーニングを積む日々を送った。実戦経験はほとんどなく、近所の草野球に助っ人として数試合参加する程度だった。

プロ入りを目指し、読売ジャイアンツを含む4球団の入団テストを受けたが、いずれも不合格となった。しかし、高校時代の猪爪氏に何か非凡なものを感じていたという西武ライオンズのスカウト、前田俊郎氏は、その後も猪爪氏の動向を追い続け、草野球の試合さえ視察していた。1999年のドラフト会議が迫る中、西武は極秘で再度テストを実施。このテストで横手投げから140km/hの速球を投げ込んだことが、プロ入りの決定的な要因となった。

プロ野球選手時代

1999年のドラフト会議で、西武ライオンズから4位指名を受けた。高校卒業後、社会人野球チームなどにも所属していなかったため、当時の所属表記は「埼工大深谷出」となり、「フリーターからプロ野球選手へ」という異色の経歴として大きな話題を呼んだ。

しかし、プロの世界は厳しかった。充分な基礎体力が備わっていなかったため、プロの練習についていくのが困難だったという。さらに肘の故障にも悩まされ、プロ1年目の2000年はファームでわずか1試合の登板に留まり、2年目の2001年も一軍公式戦への出場はなかった。背番号は52番を背負った。結局、在籍わずか2年で球団から戦力外通告を受け、23歳という若さで現役を退くことを決断した。周囲からは現役続行を勧められたが、「これで野球を続けなくて済む」と感じ、プロ野球選手としてのキャリアに終止符を打った。

指導者として

プロ野球界を離れた後は、熊谷市内のバッティングセンターに勤務した。そのバッティングセンターを利用していた小学6年生から、「地元に中学硬式野球チームがない」という相談を受けたことが、指導者の道を歩むきっかけとなった。この相談に応える形で、2003年に自ら中学硬式野球チーム「熊谷リトルシニア」を立ち上げた。以来、同チームの監督として、そして2020年現在は総監督として、多くの少年野球選手を指導している。また、「侍バッティングセンター深谷」の店長も務めており、そこでも少年野球の指導を行っている。

引退後、一度は野球から離れたものの、少年たちの声に応える形で再び野球の世界に戻り、現在は情熱を注いで後進の育成に尽力している。

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