猫オルガン

猫オルガンとは

猫オルガン（ドイツ語: Katzenklavier; 英語: cat organ）は、猫の尻尾を音源とした奇妙な楽器です。猫たちの地声の高さによって配置され、鳴き声を鍵盤によって引き出される構造を持つこの装置は、正式な製作記録は存在しませんが、文献の中でその存在が語られています。

歴史的背景

最初に猫オルガンが登場するのは、フランスの著述家ジャン=バティスト・ヴェッケルランの著作『Musiciana, extraits d’ouvrages rare ou bizarre』においてです。この楽器は、1549年にスペイン王フェリペ2世がブリュッセルで見かけた、驚くべき行列の中に見られました。この行列には、ジャンルを越えたさまざまな奇抜なキャラクターたちが登場し、その中に熊がオルガンを演奏する姿が含まれていました。このオルガンには、猫たちが閉じ込められており、それぞれの尻尾が音を出すために固定されていました。鍵盤を押すと、猫たちの鳴き声が響き渡る仕組みとなっていたのです。

猫たちは、特定の音階に従って並べられ、その鳴き声がハーモニーを奏でることから、この装置は一種の音楽的な娯楽として存在していました。この猫たちのキーが正確に並ぶことは、驚くべき技術的成果とされ、猫オルガンの特性が詩的なイメージと結びつけられる原因ともなりました。

文献に見る猫オルガン

アタナシウス・キルヒャーも、彼の著作『普遍音楽論』で猫オルガンを取り上げています。音楽の影響や効果について詳述し、音楽が人間の心や体に変化を与える力を持つと示唆しました。また、ローマでの学者による猫オルガンの製作は、メランコリーの解消を目的としており、その際にも猫たちの演奏によって聴衆を楽しませる狙いがありました。

近年の再現

1869年12月、アメリカのシンシナティで行われた演奏会では、48匹もの猫を用いた鍵盤楽器が取り上げられました。しかし、期待された演奏は猫たちの鳴き声がバラバラになり、大失敗に終わったというエピソードが残っています。さらに、2010年にイギリスの王室行事で、音楽家ヘンリー・ダグが猫オルガンを再現しました。この時は「虹の彼方に」を演奏し、好評を博しました。

また、アニメ制作会社「The People's Republic Of Animation」が手がけた短編映画『猫ピアノ』は、猫を使ったこの装置の創造的かつ不気味な側面を描いています。この作品は多くの賞を受賞し、アカデミー賞のセミノミネート作品にも選ばれるなど、現代における猫オルガンの影響を示しています。

まとめ

猫オルガンは、単なる音楽の楽器としてだけでなく、文化的犯罪と非倫理的な実験の象徴ともなっています。その存在は、音楽の背後にある感情や影響を考えるうえでも興味深いことを示唆しています。このような奇妙な楽器が文献に登場することで、過去の人々の想像力の豊かさと非現実的な側面を垣間見ることができます。

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