献体

献体について

献体（けんたい）とは、医学や歯学の進展を目的として、死後に自らの肉体を解剖学の教育資材として捧げることを約束し、その意志を尊重した遺族によって大学の解剖学教室に遺体を提供する行為を指します。献体は医学教育の重要な部分を担っており、特に解剖学実習において活用されます。

解剖の種類

人体の解剖は大きく三つに分類されます。第一は、正常解剖で、人体の構造を理解するために行われます。第二は、病理解剖で、死後直ちに病変を調査するものです。第三は、法医解剖と言われるもので、変死体の死因を明らかにするために行われます。献体に直接関連するのは、通常、正常解剖です。

献体者への敬意

医療教育機関では、献体者への感謝と敬意を表するための様々な取り組みが行われています。特に、献体者を称える顕彰碑や遺骨堂が設置され、それらは長期間にわたって維持管理されています。また、解剖実習が行われる前には、学生が献体者に参拝する習慣が一般化しています。

宗教的側面

多くの宗教は、献体の考え方に賛同しています。ヒンドゥー教、仏教、イスラム教、キリスト教など、いずれも身体や臓器の寄付が世界の改善に寄与するとの理念に基づいています。このため、宗教における献体の重要性は高く、多くの人々がこれに従って実践しています。

日本における状況

日本では、医学校のカリキュラムに遺体解剖実習が組み込まれており、文部科学省の指針では、医学部生2人に対して1体、歯学部生4人に対して1体の献体が必要とされています。近年では看護や福祉職を志す学生にも解剖実習見学が行われるようになっており、一部の大学では実際の解剖実習にも参加させる取り組みが進んでいます。

献体希望者の団体として、白菊会や不老会があります。実際、近年は献体希望者が増加しており、1960年代には遺体が引き取られない状況も見られました。1970年代半ばまで希望者は1万人程度でしたが、2007年には21万人を超える登録者が存在しています。

現代の訓練方法

献体を利用した技能向上トレーニングは制約があり、国際的に訓練を受けたり、人体と似た構造を持つ豚を用いたりするケースが見受けられます。また、3Dプリンタを使用してCTスキャン画像から作成された模型も販売され、学生の実習に活用されています。

他の寄付方法

献体とは別に、死後に身体の一部を医学研究や移植医療に提供することを申し出ることもできます。認知症などの解明に役立つブレインバンク（献脳）の仕組みも存在しますが、献体と同時に登録することはできません。献体希望者が死因や遺体の保存状態の理由で献体できない場合もあります。

歴史

日本における献体の歴史は、1868年に始まり、1949年には「死体解剖保存法」が制定されました。1983年には献体に関する法律が初めて整備され、制度化が進みました。

献体した著名人

日本の献体者の中には、美幾（1869年）や夏目漱石（1916年）など、著名な人物が含まれています。彼らは日本の医療教育の立場から重要な役割を果たしました。

献体は医学・歯学の発展に大いに貢献しており、今後も重要な制度として継続していくことが期待されます。

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