猿猴

猿猴（えんこう）について

猿猴（えんこう）は、日本の広島県や中国・四国地方に古くから存在する、伝説の生き物です。この生物は一般的な河童とは異なり、毛むくじゃらで猿に似た外見を持つとされており、非常に独特な特徴を持っています。また、金属を嫌う性質があり、主に海や川に生息すると言われています。猿猴は泳いでいる人間を襲い、特に肛門から手を入れて「生き胆」を抜き取るという恐ろしい伝承が存在します。さらに、一部の説では、猿猴は女性に姿を変えることもできるとされています。

猿猴の名称の由来

「猿猴」という言葉自体は、猿（テナガザル）と猴（マカク）を総称したもので、これらのサルを指す言葉から来ています。しかし、地域ごとの伝承により、その実態は異なっているようです。

各地の猿猴の伝説

土佐の猿猴

土佐地方に関する記乗では、猿猴は約3歳の子供に似た大きさで、長い手足と爪を持ち、ぬめりのある体型が特徴だと言われています。文久3年（1863年）には、土佐国（現在の高知県）で生け捕りにされた猿猴が、赤い顔に人のような足を持っていたという報告も残っています。猿猴は、その手を自在に伸ばすことができるとも言われ、ある男が川辺で馬を繋いでいた際に、猿猴が馬の足を引っ張り、懲罰しようと捻り上げると、一晩中捻り続けることになったとのエピソードも伝えられています。

民俗学者の桂井和雄氏の著書『土佐の山村の妖物と怪異』によれば、猿猴は市松人形に化けて夜の漁に現れることがあり、突くとにっこりと笑うという不気味な言い伝えもあります。さらに、猿猴は人間の女性に危害を加えることがあるとされ、そのような子供が生まれるとうっすらとした皿が頭にあり、歯が一本生えているのだとか。この様な子供は焼き殺される運命にあるとも伝わっています。

その他の猿猴に似た生き物

四国地方には、「シバテン」という河童に類似した妖怪も存在します。シバテンは旧暦の6月6日に川に入り猿猴に姿を変えると言い、その日には好物であるキュウリを川に流す風習があります。また、山口県の萩市大島や阿武郡にも、山に3年、川に3年住んで猿猴になるとされる「タキワロ」という妖怪が登場します。

さらに、広島市南区を流れる猿猴川という名は、これらの伝承に由来しています。この地域では「猿猴川河童まつり」が催され、地元の文化として猿猴の伝説が継承されています。

猿猴はまさに日本の伝説的な存在であり、その不思議な言い伝えは多くの地域に広がっています。今日でも地方独自の文化や祭りにその痕跡が見られ、この神秘的な生き物は人々の imaginaetion を掻き立ててやまないのです。

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