獣害

獣害とは

獣害とは、野生動物が人間の生活圏で引き起こす様々な被害の総称です。具体的には、イノシシ、シカ、クマ、サル、アライグマ、ヌートリア、ネズミ、ハクビシンなどが、食料を求めて農地や家屋に侵入し、農作物を食い荒らす、人を襲う、家屋を破壊するなどの被害をもたらします。これらの動物は、時に「害獣」とも呼ばれます。

獣害は、主に以下の4つに分類できます。

農業被害: 農作物の食害、収穫物の破壊など、農業に直接的な損害を与える被害です。野生動物が畑を荒らすだけでなく、作物を求めて農地に侵入することで、間接的な被害も発生します。
人的被害: 野生動物が人を威嚇したり、攻撃したりすることで、怪我や死亡などの人的被害を引き起こします。特にクマやイノシシなどの大型動物による被害は深刻です。
家屋被害: 野生動物が家屋や家畜小屋に侵入し、建物を破壊したり、家畜を襲ったりする被害です。屋根裏や床下などに住み着き、糞尿による衛生被害を引き起こすこともあります。
生態被害: 野生動物の過剰な捕食により、特定の生物種が絶滅の危機に瀕したり、生態系のバランスが崩れたりする被害です。外来種の侵入も、生態系に深刻な影響を及ぼすことがあります。

獣害の原因

獣害は、様々な要因が複合的に絡み合って発生します。その主な原因としては、以下のものが挙げられます。

環境破壊: 森林伐採や開発によって、野生動物の生息地が減少していることが、獣害増加の大きな要因となっています。生息地を追われた動物が、人間の生活圏に侵入せざるを得なくなっています。
気候変動: 地球温暖化による気候変動は、野生動物の生息環境や食性に変化をもたらし、獣害の発生頻度を高めています。異常気象によって、動物が餌を求めて人間の生活圏に侵入することが増えています。
生態系の変化: 外来種の侵入や、特定の動物の個体数増加によって、生態系のバランスが崩れ、獣害が発生しやすくなっています。捕食者が減ったことで、特定の動物の個体数が過剰に増え、餌を求めて人間の生活圏に侵入するケースもあります。

日本における獣害の現状

日本では、年間150～200億円もの獣害被害が発生しており、深刻な問題となっています。特に、農業被害が深刻で、農家の経営を圧迫する要因となっています。

高齢化が進む農村部では、獣害対策に十分な手が回らず、被害が拡大している地域も少なくありません。また、駆除を担う猟師の高齢化や後継者不足、報酬や待遇の低さなども問題となっています。猟師が減ることで、野生動物の個体数が増え、獣害がさらに深刻化する悪循環に陥っています。

獣害対策

獣害対策は、被害を完全にゼロにすることは難しいものの、被害を軽減させることは可能です。効果的な対策を講じることで、被害を抑えることができます。

防護柵の設置: 農地や家屋の周囲に、電気柵やネットなどの防護柵を設置することで、野生動物の侵入を防ぎます。
捕獲・駆除: 罠や猟銃などを用いて、野生動物を捕獲・駆除します。ただし、生態系への影響を考慮し、計画的な捕獲・駆除が必要です。
環境整備: 野生動物が隠れる場所をなくすため、草刈りや藪払いなどを行い、見通しを良くします。
地域ぐるみでの対策: 地域住民が協力して、獣害対策に取り組むことが重要です。専門家のアドバイスを受けながら、地域の実情に合わせた対策を講じましょう。

今後の課題

獣害問題は、単に野生動物を駆除すれば解決するものではありません。環境問題や社会構造の変化など、様々な要因が複雑に絡み合っているため、総合的な対策が必要です。効果的な対策を実施するためには、国や自治体、地域住民が協力し、獣害問題に取り組むことが重要です。

また、狩猟者の育成や、ジビエの有効活用など、多角的な視点での対策も検討していく必要があります。野生動物との共存を目指し、持続可能な社会を築いていくことが、今後の課題となります。

参考情報

獣害 - コトバンク
* 自治体担当者向け鳥獣被害対策マニュアル - 農林水産省

もう一度検索