玄界灘海難事故

玄界灘海難事故：二つの悲劇

2003年7月、福岡県沖の玄界灘で、二件の海難事故が相次いで発生しました。これらの事故は、大型貨物船が日本の漁船と水産庁の漁業取締船に衝突するというもので、海上衝突予防法を無視した危険な航行が原因でした。特に、事故後の救助活動が行われなかったことが、大きな問題として残りました。

第18光洋丸とフン・ア・ジュピターの衝突

最初の事故は7月2日に発生しました。パナマ船籍の韓国興亜海運社所有の貨物船「フン・ア・ジュピター」が、巻き網漁船「第18光洋丸」に衝突しました。この事故により、第18光洋丸の乗組員17名が海に投げ出され、1名が死亡、6名が行方不明、2名が負傷するという悲劇に見舞われました。

事故の経緯：

6月29日、第18光洋丸は山口県下関漁港を出港。
7月1日、フン・ア・ジュピターは韓国釜山港を出港。
7月2日、第18光洋丸は沖ノ島灯台沖で投網を開始。フン・ア・ジュピターが接近。
第18光洋丸は、フン・ア・ジュピターに注意を促すため、運搬船を派遣し、作業灯を点滅、サーチライトを照射、汽笛を鳴らすなどの措置を講じる。
2時25分、フン・ア・ジュピターが第18光洋丸の左舷中央に衝突。17名が海に投げ出される。

フン・ア・ジュピターは、第18光洋丸が網を張って操船が困難な状態であったにも関わらず、速度を落とさずに直進し、衝突に至りました。さらに、衝突後も救助活動を行わず、現場を離れようとしたことは、非難されるべき行為でした。

からしまとコレックス・クンサンの衝突

二件目の事故は7月6日に発生しました。第18光洋丸の事故で行方不明者の捜索中であった水産庁の漁業取締船「からしま」が、韓国の貨物船「コレックス・クンサン」に衝突されました。からしまは、二隻の国籍不明船を回避中にコレックス・クンサンに衝突され、破損・浸水し、最終的に沈没しました。乗組員は全員救助されましたが、1名が軽傷を負いました。

事故の経緯：

からしまは、二隻の国籍不明船を回避中にコレックス・クンサンに接近される。
衝突の危険を避けるため、からしまは停船。
停船直後、コレックス・クンサンがからしまの左舷に衝突。

海上衝突予防法では、真向かいに行き会う場合は互いに右に針路を変えることが定められていますが、コレックス・クンサンはこれを無視して左に転進し、からしまに衝突しました。また、この事故でも、コレックス・クンサンは救助活動を一切行いませんでした。

事故後の状況

これらの事故は、同日に発生した長崎男児誘拐殺人事件の影響もあり、大きく報道されることはありませんでした。韓国側からの公式な謝罪や補償も行われていません。

しかし、フン・ア・ジュピターの乗組員である韓国人二等航海士に対して、福岡地裁小倉支部は、業務上過失致死傷などの罪で懲役3年の実刑判決を下しました。裁判所は、航海士が適切な回避義務を怠ったことを厳しく非難し、その過失が重大であると認定しました。

2003年8月6日には、合同慰霊祭が執り行われ、犠牲者の冥福が祈られました。

まとめ

玄界灘海難事故は、海上における安全航行の重要性と、海難事故発生時における救助義務の重大さを改めて浮き彫りにしました。特に、救助活動を怠った行為は、国際的な非難を受けるべきものであり、今後の海難事故防止に向けて、より一層の対策が求められます。

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