玉津丸

玉津丸（たまつまる）について

玉津丸は、日本陸軍が1944年1月に、民間の大阪商船名義で建造した揚陸艦である。この艦船は、上陸用舟艇の母艦としての機能を備え、特に陸軍特種船として利用が計画されたもので、正式な竣工から約半年後の1944年8月にフィリピンへの輸送中にアメリカ海軍の潜水艦に攻撃され沈没した。乗員全4820人のほとんどが戦死するという、戦争の悲劇を象徴する艦船でもある。

建造の背景

玉津丸の建造は、日本陸軍が1934年に成功裏に完成させた「神州丸」の実績をもとに、陸軍特種船を量産するためのプロジェクトの一環として進められた。しかし、平時から多くの大型艦を維持する予算の確保は難しく、民間の船会社に建造を委ね、戦争時のみ徴用する形が取られた。この結果、大阪商船に発注されたのが玉津丸である。

玉津丸は1942年11月4日に三井造船玉野工場で起工され、1944年1月20日に竣工した。この艦は基本形の甲型に属し、「摩耶山丸」と同型であるが、構造的には全く異なっている。船体は通常の商船を模しており、上陸用舟艇を収納するための全通甲板が設けられ、兵員居住区画には多くの舷窓が備えられていた。

運用と最後の航海

竣工後すぐに徴用された玉津丸は、上陸戦が行われない太平洋戦争後期においても部隊の輸送に従事した。最初の大規模な作戦に参加することなく、ヒ68船団などを通じての輸送に偏った運用が続くことになった。

最後の航海は1944年8月に、フィリピンへの増援部隊を運ぶために出港したヒ71船団への参加が含まれていた。この時、約4500人の兵士を乗せて出撃し、8月10日に出港。馬公を経由し、8月18日にルソン島北岸に近づいたところでアメリカの潜水艦からの集中攻撃を受けた。

混乱の中で船団の隊形が崩れ、玉津丸は他の艦船から孤立した。全速力で回避を試みたものの、運命は過酷だった。8月19日未明、玉津丸はアメリカ潜水艦「スペードフィッシュ」に発見され、魚雷の攻撃により左舷が撃たれた。短時間で浸水が進み、沈没までたった4分という急展開であった。

沈没とその影響

玉津丸の沈没は、日本の軍艦において最も悲惨な出来事の一つとされており、4820人中約99%に当たる4755人が戦死するという結果をもたらした。死者は陸軍の将兵が大半を占め、特に独立歩兵第13連隊の隊員が多かった。また、艦の乗組員も多数が命を落とした。この事件は日本の戦没輸送船の中でも特に多くの犠牲者が出たとして知られている。

玉津丸はその短いサービス期間にもかかわらず、戦争の悲惨さを象徴する艦船として記憶され続けている。

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