玉田工業

玉田工業株式会社

玉田工業株式会社（たまだこうぎょう）は、石川県金沢市に本社を構える、社会基盤を支える製品とサービスを提供する企業です。主に、石油製品などの安全な貯蔵に不可欠な地下タンクや、火災発生時の水源として重要な役割を果たす防火水槽の製造、設計、そして設置工事を手がけています。さらに、エネルギー供給の最前線であるガソリンスタンドの設計、建設、さらにはその後の保守管理に至るまで、幅広い事業を展開しています。

事業内容と製品

同社の事業の中核を占めるのは、各種地下埋設タンクと防火水槽です。これらの製品は、ガソリンスタンドはもちろんのこと、工場、空港、公共施設など、様々な場所で使用され、燃料の安定供給や防災体制の構築に寄与しています。特に地下タンクは、環境保護の観点からも高い安全性が求められるため、厳しい基準に基づいた設計と製造が行われています。また、ガソリンスタンド事業においては、単に設備を供給するだけでなく、立地選定から店舗設計、建設工事、そして継続的なメンテナンスまで、トータルなソリューションを提供することで、顧客の事業運営を強力にサポートしています。

特徴的な技術：SF二重殻タンク

玉田工業の技術力を示す代表的な製品に「SF二重殻タンク」があります。これは、同社が独自に開発し、特許を取得した画期的な構造を持つ地下タンクです。内部に鋼製タンクを配置し、その外側全体を高い強度と耐食性を持つ繊維強化プラスチック（FRP）で隙間なく覆うという二重構造を採用しています。この「Steel Reinforced Plastic」（FRP強化鋼製）構造から「SF」の名称がつけられています。この二重殻構造により、万が一、内側の鋼製タンクに漏洩が発生した場合でも、外側のFRP層が液体を保持し、土壌汚染などの環境リスクを大幅に低減することが可能です。高い安全基準が求められる現代において、このSF二重殻タンクは多くの顧客から信頼を得ています。

沿革

会社のルーツは、1950年4月1日に設立された玉田製作所に遡ります。設立当初は小規模な製造業でしたが、事業の拡大に伴い、1957年7月3日には株式会社化を果たし、株式会社玉田製作所となりました。その後、企業規模のさらなる成長と事業内容の多様化に対応するため、1974年4月には商号を現在の玉田工業株式会社に変更し、本社も金沢市西念町に移転しました。さらに効率的な生産体制を構築するため、1986年3月には本社機能を工場と統合する形で、現在の石川県金沢市無量寺町の敷地に移転しました。

事業所体制

玉田工業は、全国的な事業展開を支える強固な事業所ネットワークを持っています。本社機能は、石川県金沢市にある北陸工場に置かれています。製造能力を確保するため、北陸に加えて、関東地方には栃木県鹿沼市に関東工場、九州地方には熊本県菊池市に九州工場を有しており、主要地域への供給体制を確立しています。また、顧客への密着したサービスを提供するため、全国主要都市に12か所の営業所を設置し、地域ごとのニーズに応じた迅速な対応を行っています。

社会的貢献事例：東日本大震災対応

2011年3月11日に発生した東日本大震災に伴う東京電力福島第一原子力発電所事故は、日本社会に甚大な影響を与えました。この事故により発生した、高濃度の放射性物質を含む大量の汚染水の貯蔵は、極めて困難な課題となりました。玉田工業は、この喫緊のニーズに応えるため、汚染水貯蔵用の特殊なタンク製造を受注しました。製造されたタンクは、事故発生後の同年6月4日から、福島県双葉郡楢葉町にあるJヴィレッジを経由し、福島第一原発敷地内へ順次搬入され、8月にかけて設置が進められました。この迅速な対応は、大規模災害時における同社の技術力と供給能力が、国家的な危機管理においても重要な役割を果たすことを証明する事例となりました。

玉田工業は、独自の技術と全国的なネットワークを活かし、エネルギー供給、防災、環境保全といった社会的に重要な分野で貢献を続けています。

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