王になろうとした男 (映画)

アフガニスタン辺境の冒険と、叶わぬ夢――映画『王になろうとした男』

1975年、ジョン・ヒューストン監督によって映画化された『王になろうとした男』（原題：The Man Who Would Be King）は、ラドヤード・キップリングの同名小説を基にした壮大な冒険活劇です。ショーン・コネリーとマイケル・ケインという豪華俳優陣の共演も話題を呼びました。

物語は、イギリス領インド帝国を舞台に幕を開けます。退役軍人のカーネハンとドレイボットは、王になるという壮大な夢を抱き、アフガニスタン辺境部の未開の地、カフィリスタンへと旅立ちます。彼らの冒険は、危険とスリルの連続です。

予期せぬ出会いから始まる冒険

物語の始まりは、ラホールにある北極星新聞の記者であるキップリングとの再会シーンです。3年ぶりに再会したカーネハンは、王になるという野望の実現に向けて動き出そうとしていました。そして、もう一人の男、ドレイボットとの再会を果たし、2人はアフガニスタンへと向かう計画を立てます。

キップリングは、2人が藩王を脅迫しようとしていたことを知りますが、フリーメイソン会員であった彼らを釈放するように要請し、カフィリスタンへの旅立ちを見送ります。旅の餞別として、キップリングはドレイボットにフリーメイソンの紋章を渡します。

過酷な旅路とカフィリスタンの征服

カフィリスタンへの道程は険しく、危険に満ちていました。巨大なクレバスに阻まれ、食料も尽きかけ絶体絶命の危機に陥りますが、奇跡的に雪崩によって道が開け、彼らはカフィリスタンへと足を踏み入れます。

そこで待ち受けていたのは、仮面をつけた部族との衝突でした。マルティニ・ヘンリー銃を駆使して敵を撃退し、捕虜を連れて部族の城へと向かいます。そこで出会ったのは、かつてカフィリスタンに滞在経験のあるグルカ兵ビリー・フィッシュでした。ビリーを仲間に加え、彼ら3人は首長ウータを操り、カフィリスタンを征服しようと画策します。

巧妙な策略と武力によって、彼らはカフィリスタンを制圧することに成功します。ドレイボットは、かつてカフィリスタンを征服した伝説の英雄シカンダー（アレクサンダー大王）の息子として崇められるようになります。しかし、この栄光は長くは続きませんでした。

夢の破綻と悲劇

カフィリスタンの王となったドレイボットは、贅沢な生活に溺れていきます。カーネハンはドレイボットに別れを告げようとするも、結婚式に参列することになります。しかし、結婚式当日、予期せぬ出来事が起こります。「神に愛された女は灰になる」という言い伝えを信じ、恐怖に駆られた王妃ロクサネがドレイボットを噛み、ドレイボットから血が流れ出ます。

ドレイボットが偽物だと気づいた民衆は暴動を起こし、ドレイボットとカーネハンは命からがら逃亡を試みますが、最後は捕まり処刑されてしまいます。ドレイボットは吊り橋から谷底に突き落とされ、カーネハンは磔にされますが、奇跡的に生き延びてラホールに帰還します。

映画化への道のり

映画『王になろうとした男』の製作には、数々の困難がありました。当初はクラーク・ゲーブルとハンフリー・ボガートを主演に計画されていましたが、2人の死により頓挫。その後、数々の俳優が候補に挙がるも、最終的にはショーン・コネリーとマイケル・ケインが選ばれました。ロクサネ役には、当初ロアルド・ダールの娘が予定されていましたが、監督の意向により変更されています。

批評家の評価

映画は批評家から高い評価を受けました。『ニューヨーク・マガジン』のジョン・シモンは「ジョン・ヒューストンにとって、『アフリカの女王』を超える最高の作品」と絶賛し、タイム誌のジェイ・コックスも高い評価を与えています。ロジャー・イーバートは四つ星満点を与え、スリリングで楽しい作品と評しています。一方、『バラエティ』誌はマイケル・ケインの演技を批判的に評価しています。

受賞とノミネート

『王になろうとした男』は第48回アカデミー賞で4部門にノミネートされました。美術賞、脚色賞、衣裳デザイン賞、編集賞です。この他にも、ゴールデングローブ賞やBAFTA賞にもノミネートされました。

『王になろうとした男』は、壮大な冒険、ユーモア、そして人間の業を描き出した、忘れがたい名作です。

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