王子電気軌道

王子電気軌道株式会社の歴史と事業展開

王子電気軌道株式会社（おうじでんききどう）は、東京で電気事業、軌道事業（路面電車）、および路線バス事業の3つの主要事業を展開していた歴史ある企業です。通称「王電」や「王子電車」として地域住民に広く親しまれています。

設立の背景と歴史

1906年5月、日露戦争後の都市交通の需要の高まりを受けて、松本錬蔵をはじめとする4名の発起人が中心となり、電気軌道の設立を目指しました。これに賛同した賛同者は30名にも上り、1907年5月には内務大臣の許可を得て正式に会社としての第一歩を踏み出しました。設立時の本社は京橋区に置かれました。

当初、事業は順調ではなく、資金難に直面しましたが、渋沢栄一や才賀電機商会の助けを得て、経営体制を整え、1910年には電灯電力事業と電気供給事業の許可を取得しましたのち、1911年には大塚から飛鳥山までの軌道を開通し、営業を開始しました。

事業拡大と発展

1912年には南千住までの「三ノ輪線」の建設が始まり、順調に進展。1913年にはこの路線の営業運転が開始され、王子電気軌道は重要な幹線を手に入れました。この時期、電気供給事業も拡大し、需要の高まりに応じて供給量も増加しました。

しかし、まもなくして、電気軌道の旅客営業成績が落ち込み、経営が難航し始めました。1914年の臨時株主総会では、経営体制の近代化を図るため新しい取締役が選任されました。これにより、経営の刷新が図られましたが、資金調達には苦労し、公私ともに不安定な時期が続きました。

1914年末には猪苗代水力電気からの受電が可能となり、経営が改善の兆しを見せましたが、それでもなお頻繁にトップが入れ替わり、経営の不透明さは続きました。王子電気軌道は大正末期から昭和初期にかけて複雑な経営状況に悩まされ、電灯事業こそが利益を上げていましたが、電気軌道事業は収益を圧迫する要因となっていました。

合併と廃止

1942年、王子電気軌道は電力統制の影響を受け、会社は関東配電に統合され、同時に軌道事業は東京市電気局に引き継がれました。こうして王子電気軌道はその歴史に幕を閉じました。しかし、同社が所有していた王電ビルヂングはその後も「梅沢写真会館」として地域に残り、今でも地元住民から親しまれています。

本社の移転と路線ネットワークの発展

王子電気軌道は事業開始から多くの変遷を経ましたが、本社は数回の移転があり、最終的には巣鴨村の新田に設置されました。電灯電力事業は主務に位置づけられつつ、副業の軌道事業に必要な電力を提供していました。会社は東京の城北地区や埼玉県に広く電力を供給し、当時の東京市内では顕著な存在となっていました。

まとめ

王子電気軌道は、様々な事業を展開し、地域の交通体系を支えていた企業でしたが、経営環境の変化や統合により、1942年にその歴史を終えました。現在も、一部の施設や路線はその名残をとどめています。このように、王子電気軌道は東京や周辺地域の発展に寄与し、多くの市民を支えてきた企業として評価されています。

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