王延鈞

王延鈞（おう えんきん）： 閩の初代皇帝、その生涯と悲劇

王延鈞は、五代十国時代の閩（びん）の第3代君主であり、初代皇帝です。太祖・王審知（おう しんち）の次男として生まれました。

王位簒奪と即位

天成元年（927年）、王延鈞は養子の王延稟（おう えんぴん）と共謀し、兄である嗣王・王延翰（おう えんかん）を殺害して王位を奪取しました。その後、後唐（こうとう）から威武軍節度使（いぶぐんせつどし）・閩国王（びんこくおう）に封じられます。

仙術への傾倒と帝号簒称

王延鈞は仙術に深く傾倒し、宝皇宮（ほうこうきゅう）を建設して道士の陳守元（ちん しゅげん）に与えました。陳守元の言葉に従い帝号を欲するようになり、長興3年（932年）には後唐に対し、呉越王（ごえつおう）・尚書令（しょうしょれい）に封じるよう要求しましたが拒否され、後唐との関係は断絶しました。

長興4年（933年）、王延鈞はついに帝号を称し、国号を大閩（だいびん）と改め、独自の元号として龍啓（りゅうけい）を建元、自らも王鏻（おう りん）と改名しました。しかし、自国の国力を客観的に理解していたため、無謀な国政運営は行わず、国内は比較的安定していました。

後宮の争いと悲劇的な最期

後宮では、王審知の婢女であった陳金鳳（ちん きんぽう）を寵愛しました。陳金鳳は容姿は美しいとは言えませんでしたが、淫蕩な性格であったと伝えられています。恵宗が晩年病を得ると、陳金鳳は部下の李可殷（り かいん）と私通するようになり、国人はこれを大いに恨んだと言います。

永和元年（935年）、陳金鳳は皇后に立てられますが、恵宗の病状は更に悪化。次男の王継鵬（おう けいほう）と皇城使（こうじょうし）の李倣（り ほう）は、事前に陳后の勢力を排除すべく挙兵。李倣が宮廷に入り恵宗を刺し、瀕死の重傷を負わせました。恵宗は宮女の助けを借りて自害し、陳后勢力は一掃されました。

王延鈞の生涯は、王位簒奪から始まり、帝号簒称、そして後宮の争いという、激動の時代を象徴するものでした。その治世は比較的安定していたものの、晩年は家臣と后妃の争いに巻き込まれ、悲劇的な最期を迎えました。

宗室

后妃
明恵皇后 劉華（劉隠の次女、南漢の清遠公主）
廃后金氏
皇后 陳金鳳
男子
建王 王継厳 - 母は明恵皇后
康宗 王継鵬 - 母は明恵皇后
福王 王継韜 - 母は明恵皇后
臨海郡王 王継恭 - 母は明恵皇后
王継鎔 - 母は陳金鳳

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