王審知

王審知（おう しんち）： 閩の初代王、その生涯と業績

王審知（862年 - 925年）は、五代十国時代の閩（びん）を建国した初代の王であり、その治世は福建地方の安定と発展に大きく貢献しました。

生涯

王審知は、光州固始県（現在の河南省信陽市固始県）の出身です。中和5年（885年）、兄である王潮、王審邽と共に、寿州の首領であった王緒に従って福建地方へと転戦しました。しかし、王緒の猜疑心の強さから対立が生じ、王潮が政変を起こして王緒を捕らえる事態となります。その後、王潮は勢力を拡大し、景福2年（893年）には福州を攻略し、現在の福建省全域を勢力下に置くことに成功しました。王審知は、この功績により福建観察副使に任じられました。

乾寧4年12月6日（898年1月2日）に王潮が死去すると、王審知はその後を継いで威武軍節度使となりました。彼は唐朝より瑯琊王に封じられ、開平3年（909年）には閩王に封じられました。王審知は、自らが貧しい民衆出身であったことから、倹約を旨とする政治を行い、税や徭役の負担を軽減することで民力の回復に尽力しました。

同光3年（925年）に薨去し、忠懿王と諡号を贈られました。王位は長男の王延翰が継承しましたが、後に王延鈞が皇帝に即位すると、王審知は昭武孝皇帝と追諡され、廟号は太祖とされました。

家族

王審知は多くの妻妾を持ち、多くの子を儲けました。

正室：任内明（皇后を追贈）
側室：黄恵姑

男子には、嗣王となった王延翰をはじめ、王延稟（養子、もとの名は周彦琛）、恵宗 王延鈞、王延豊（養子、長兄の王潮の実子）、王延美（養子、次兄の王審邽の実子）、王延保、王延武（建州刺史）、王延望（戸部尚書）、景宗 王延羲、王延喜（汀州刺史）、王延政、王延資らがいました。

女子には、李敏に嫁いだ王氏や、呉越の武粛王銭鏐の子である銭元珦に嫁いだ瑯琊郡君がいました。

政策と評価

王審知は、民衆の負担を軽減する政策を積極的に行ったことで知られています。また、彼は仏教を保護し、寺院の建立を奨励しました。彼の治世下で、福建地方は経済的に発展し、文化も栄えました。王審知は、その功績から、現在でも福建地方の人々から敬愛されています。

参考文献

常盤大定「佛教史上に於ける二人の忠懿王」（『支那仏教の研究　第二』1979年、名著普及会）
鈴木哲雄「閩国忠懿王王審知における仏教」（『天台思想と東アジア文化の研究‐塩入良道先生追悼論文集』1991年、山喜房仏書林）

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