王得仁

王得仁（おうとくじん）は、明代に活躍した官僚であり軍人です。生年は明らかになっていませんが、1449年に没しました。名は仁、字（あざな）は得仁といい、一般には字の得仁で知られています。彼の本貫は南昌府新建県です。

出自と初期の経歴

王得仁はもともと謝姓でしたが、父が母方の実家の仇を避けるために王氏を名乗るようになりました。彼は5歳の時に母親を亡くし、その悲しみに深く沈み、成人のように礼を尽くして喪に服したと伝えられています。最初は衛吏（えいり）という役人でしたが、その才能が認められ、推薦を受けて汀州府（ていしゅうふ）の経歴（けいり）という役職に任命されました。

汀州府での活躍

正統9年（1444年）、王得仁は任期を満了し転任することになりましたが、汀州府の軍民数千人が彼の留任を強く求めました。その結果、彼は秩禄を増やして再任されることとなりました。正統12年（1447年）、汀州府の推官（すいかん）という役職が欠員となった際、英宗（えいそう）は軍民の請願を受け入れ、王得仁を抜擢して推官に任命しました。彼は、民衆から非常に信頼されていたことがわかります。

反乱の鎮圧と最期

正統14年（1449年）5月、沙県（さけん）の反乱軍の首領である陳政景（ちんせいけい）が、清流県の藍得隆（らんとくりゅう）らの反乱軍と合流して汀州府城を攻撃しました。王得仁は汀州の守将や知府の劉能（りゅうのう）とともに反乱軍を撃破し、陳政景ら84人を捕らえることに成功しました。残りの反乱軍は潰走しました。都指揮（とじき）の馬雄（ばゆう）が反乱軍と通じた者の名簿を入手し、これに基づいて処罰しようとした際、王得仁は名簿を焼き捨てるよう進言しました。これは、反乱に加わった民衆を慮った行動であると考えられます。

その後、反乱軍が寧化県（ねいかけん）に進攻すると、王得仁は兵を率いて援軍に駆けつけました。反乱側の民衆の多くが脱落して帰順したため、反乱軍の勢力は著しく衰えました。

反乱軍が将楽（しょうらく）に退却した際、王得仁は追撃しようとしましたが、突然病に倒れてしまいました。周囲の者は汀州府に帰って医師の治療を受けるよう勧めましたが、彼は聞き入れず、陣中に留まって指揮を続けました。しかし、病状は悪化し、間もなく亡くなりました。

死後の顕彰

天順7年（1463年）、汀州府の官吏と民衆は、王得仁の功績を称え、彼を祀る祠（ほこら）を建てたいと請願し、朝廷から許可されました。彼の忠義と民衆からの信頼の厚さがうかがえるエピソードです。

子

王得仁には、謝一夔（しゃいっき）という息子がいました。

参考文献

* 『明史』巻165 列伝第53

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