王翁須

王翁須（おう おうしゅ、生年不詳 - 紀元前91年）は、前漢時代の人物で、後の宣帝の生母として知られています。彼女は史皇孫劉進の妻であり、宣帝を産みました。翁須は彼女の字（あざな）であり、本名は記録に残っていません。

王翁須の父は、涿郡広望侯国（現在の河北省保定市清苑区一帯）出身の王虒始（おう しし）という人物でした。母は同じく涿郡の蠡吾県（れいごけん）の出身です。彼女には王無故（おう ぶこ）、王武（おう ぶ）という二人の兄がおり、甥には王武の子である王商（おう しょう）がいました。

幼少の頃、王翁須は8、9歳の頃に広望侯劉忠（中山王劉勝の子）の子である劉仲卿（りゅうちゅうけい）の家に預けられ、そこで舞踊を習いました。しかし、成長した彼女は、劉仲卿によって邯鄲（現在の河北省邯鄲市）に売られてしまいます。王翁須の両親は娘を取り戻すためにお金を集めながら彼女を追いましたが、ついに消息を絶ってしまいました。

数年後、王翁須は選ばれて舞姫として後宮に入り、皇太子劉拠（武帝の長男）の子である劉進の寵愛を受けるようになりました。彼女は劉進との間に男子（後の宣帝）を産みます。しかし、その数ヶ月後、前漢を揺るがす大事件である巫蠱（ふこ）の獄が起こり、皇太子劉拠とその一族は謀反の罪で処刑されてしまいます。王翁須もまた、謀反人の家族として処刑されるという悲劇的な運命をたどりました。

時が経ち、王翁須の息子である劉病已（りゅう へい）が宣帝として即位すると、彼は生母である王翁須に悼后（とうこう）という諡号を贈り、手厚く改葬しました。また、宣帝は王翁須の母の事を知ると、博平君（はくへいくん）の号を贈りました。

王翁須の生涯は、彼女自身には何の罪もないにもかかわらず、時代の波に翻弄され、悲劇的な結末を迎えた女性の物語として、後世に語り継がれています。

参考文献：
* 班固著『漢書』巻97上 王夫人伝

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