劉拠

劉拠（りゅう きょ）

劉拠（紀元前128年 - 紀元前91年）は、前漢の武帝の長男であり、太子でした。母は武帝の皇后である衛子夫で、宣帝の祖父にあたります。諡は戻太子（戾太子）で、衛太子とも呼ばれています。

生涯

元狩元年（紀元前122年）に太子に立てられ、『春秋公羊伝』・『春秋穀梁伝』を学びました。しかし、武帝の晩年に信任を得た江充との対立が、彼の運命を大きく左右します。

江充は監察官として権勢家や皇族をも弾劾し、太子をも対象としました。巫蠱の獄において、江充は皇后や太子の宮殿から証拠を発見したと主張し、劉拠は追い詰められます。自らの破滅を悟った劉拠は、長安で挙兵し、江充を逮捕・斬殺しました。また、取り調べに関与した韓説も殺害しました。

武帝は劉拠の挙兵を謀反とみなし、丞相の劉屈氂に討伐を命じます。劉拠は丞相軍と交戦しますが敗北し、長安から逃れて潜伏しました。しかし、追っ手に発見され、自殺という最期を遂げました。劉拠の挙兵は、彼の妻子を巻き込む悲劇となり、当時乳飲み子であった孫の劉病己（後の宣帝）を除いて処刑されました。また、生母の衛子夫も皇后の地位を剥奪され、自殺に追い込まれました。

事件後、江充の悪事が明らかになると、武帝は劉拠の冤罪を認め、名誉を回復させました。そして、江充の一族は皆殺しに処されました。武帝は劉拠の死を悼み、思子宮を建設したと伝えられています。

劉拠の孫である劉病己は、巫蠱の獄を生き延び、民間で育てられました。武帝の死後、昭帝、劉賀と皇帝が交代しますが、劉賀は廃位され、劉病己が宣帝として即位しました。宣帝は祖父である劉拠に「戾」という諡を贈り、戾太子と呼ばれるようになりました。

偽太子事件

劉拠の死後も、彼が生きているという噂が絶えませんでした。始元5年（紀元前82年）、黄色い牛車に乗った男が「自分こそ太子劉拠である」と名乗り出ます。多くの人々が彼を亡き太子に似ていると感じましたが、京兆尹の雋不疑は、彼を罪人として逮捕しました。取り調べの結果、男は夏陽県出身の成方遂という人物で、太子の家臣の知人であり、富貴を得ようと偽ったことが判明し、処刑されました。

劉拠の生涯は、武帝の寵臣との対立、冤罪、そして一族の悲劇が絡み合った、波乱に満ちたものでした。しかし、彼の孫である宣帝の即位によって、その血筋は再び皇位へと返り咲くこととなったのです。

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