玩具絵

玩具絵（おもちゃえ）

玩具絵とは、江戸時代から明治時代にかけて制作された浮世絵の一様式であり、子供たちが遊びや学習に用いるために作られました。かつては「手遊び絵」とも呼ばれていました。

概要

この時代の玩具絵は、子供向けの絵本や図鑑、メンコとして切り抜いて遊ぶもの、双六などのゲームとして、様々な形で制作され、当時の児童文化の向上に大きく貢献しました。遊びに使うものから、教訓的な内容を含むもの、凧絵や細工絵など、その内容は多岐にわたります。

代表的なものとして、着せ替え絵、姉様絵、両面絵、折りたたみ絵、擬人絵、組上絵、尽くし絵、双六絵（絵双六）、かるた絵、影絵、目付絵などが挙げられます。明治時代以前は「手遊び絵」と呼ばれていましたが、「おもちゃ」という言葉が生まれた明治以降に「玩具絵」という名称が用いられるようになりました。

寛政・享和期には鍬形蕙斎や葛飾北斎などが盛んに描き、文化期には歌川国長や歌川豊久らが活躍しました。幕末になると歌川国芳、歌川国利、歌川国梅、落合芳幾、長谷川貞信らが手掛けています。特に、幕末から明治期にかけて活躍した歌川芳藤は、玩具絵の作者として知られています。

多様な種類の玩具絵

着せ替え絵: 美人画や役者絵の着物や髪の部分を替えられるようにしたもので、着せ替え人形のようにして遊びます。
双六絵: 子供向けとしてだけでなく、啓蒙や案内としても活用され、明治期まで広く制作されました。「五十三次双六」、「十界双六」、「鉄道双六」などが代表的です。
組上絵: 起こし絵、組立絵、切組灯籠絵、立て版古とも呼ばれ、芝居の舞台、風景、建築などを摺ったものを切り抜いて立体的に組み立てるものです。灯籠の中に入れて灯りをともして鑑賞しました。上方で始まり、後に江戸でも流行しました。
目付絵: 複数の役者の顔を枡形に区切った中に描き、どれか一つに目をつけさせる遊びです。当てる側は質問を繰り返し、最終的にどの絵かを当てます。
姉様絵: 家族や男女の様々な風俗の立姿が並列して描かれたもので、切り抜いて人形遊びに用いました。

主な作品

「いろはたとえ辻占いかるた」 大判 3代歌川豊国 国立国会図書館所蔵 団仙堂版
「新版鳥つくし」 大判 落合芳幾 嘉永5年 国立国会図書館所蔵 辻岡屋文助版
「新版凧つくし」 大判 歌川芳艶 安政4年 国立国会図書館所蔵 辻岡屋文助版 ※凧に描かれた纒9種類を描く





玩具絵は、江戸時代から明治時代にかけての子供たちの遊びと学習を支えた貴重な文化遺産であり、当時の風俗や文化を知る上で重要な資料となっています。

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