珠洲駅

石川県珠洲市野々江町に位置していた珠洲駅は、かつてのと鉄道能登線の重要な駅でした。2005年（平成17年）に能登線が廃止されたことで、その歴史に幕を下ろしました。廃駅となった後、その跡地は地域の新たな拠点として生まれ変わり、2010年（平成22年）には道の駅「すずなり」が開設されています。

歴史

珠洲駅は、1964年（昭和39年）9月21日に日本国有鉄道（国鉄）能登線の駅として開設されました。貨物取り扱いは1981年（昭和56年）11月20日に、荷物扱いは1984年（昭和59年）2月1日にそれぞれ終了しました。1987年（昭和62年）4月1日の国鉄分割民営化を経て西日本旅客鉄道の駅となりますが、翌1988年（昭和63年）3月25日にはのと鉄道へ移管され、同社の能登線駅となりました。そして2005年（平成17年）4月1日、能登線全線廃止に伴い、珠洲駅も廃止されました。廃止前日の3月31日に運行された能登線最後の列車は、穴水駅を出発し当駅で終着となりました。この列車は4両編成で運行され、到着後、先頭の1両は回送列車として蛸島駅へ向かい、その手前の線路上にしばらく留置された一方、残りの3両は折り返し穴水へ回送されています。駅舎や検車庫などの関連施設は、2009年（平成21年）1月から2月にかけて解体工事が行われ、同年2月10日に完了しました。その後、駅跡地には道の駅が建設され、「すずなり館」という名称で2010年（平成22年）3月25日に施設が完成。同年4月3日に道の駅「すずなり」として正式に開業し、かつての駅の姿は消滅しました。

駅の構造と機能

珠洲駅は地上駅で、島式ホーム1面2線を有していました。直営駅として運営され、側線や車両を留置する車庫も備えられた主要な駅の一つでした。夜間滞泊も設定されるなど、列車の運行において重要な役割を担っており、当駅を始発・終着とする列車や、長時間停車する列車が数多く設定されていました。駅舎からホームへ移動するには、複数の線路を横断する構内踏切を渡る必要がありました。駅舎自体は平屋建てで、駅の裏側に位置する石川県立飯田高等学校や珠洲市総合病院へ通う人々の利便を図るため、ホームから直接外部へ出られる出入り口が設けられていました。廃駅となった後も、駅敷地が南北を隔てる障害とならないよう、毎日午前8時から午後5時までの間は、徒歩での通り抜けが可能とされていました。

駅周辺と利用状況

駅周辺には、以下のような主要な施設が点在していました。

• - 珠洲市総合病院
• - 珠洲駅前郵便局
• - 石川県立飯田高等学校
• - 珠洲市立緑丘中学校
• - 珠洲市立健民体育館、同武道館
• - JAすずし本所、同付設葬祭会館、同中央支店

駅の利用状況については、「石川県統計書」において、廃止前までの各年度の1日平均乗車人員が記録されています。

バス交通との連携と変遷

鉄道駅として機能していた時期には、西日本JRバスの路線バスが駅構内に乗り入れていました。現在、駅跡地には北陸鉄道グループである北鉄奥能登バスの車庫（飯田支所）が設けられており、かつての鉄道代替バスなどが運行されています。バス停留所の名称も時代と共に変化しました。廃駅となるまでは「珠洲駅前」と呼ばれていましたが、廃止後の2005年（平成17年）4月1日以降は、一部の路線（市街地循環バス、小屋線）を除き、「昭和橋」に改称されました。その後、駅跡地に道の駅「すずなり館」が開設された2010年（平成22年）4月1日からは、全てのバス路線において停留所名が「すずなり館前」に統一されています。

廃止から道の駅への再生

能登線廃止に伴い珠洲駅が廃駅となった後、駅舎は当初、そのままの形で一時的に保存されていました。珠洲市は駅舎の待合室や駅事務室を改装し、「奥能登すずなり市場」として地元の特産物を販売する場として活用します。その後、2008年（平成20年）末には、珠洲市が駅に付随する検車庫なども含めて敷地全体を買収。さらに、2009年（平成21年）1月から2月にかけて、保存されていた駅舎を含め、全ての建物の解体が進められました。解体後の広大な敷地は、多目的広場や駐車場として整備されるとともに、奥能登すずなり市場に付随するバスターミナルやバスの車庫が建設されました。こうした一連の再開発を経て、2010年（平成22年）4月3日、かつての珠洲駅跡地は道の駅「すずなり」として新たな歴史を刻み始めました。

珠洲駅は、半世紀近くにわたり能登線の重要な拠点として地域の人々の暮らしを支えましたが、路線の廃止と共にその役割を終えました。しかし、その場所は失われることなく、地域の交流と賑わいを創出する道の駅として再生。形は変われども、今もなお地域の中心としての機能を果たし続けています。

もう一度検索