珪亜鉛鉱

ウィレマイト（珪亜鉛鉱）：蛍光を放つ亜鉛の宝石

ウィレマイトは、化学式Zn₂SiO₄で表される亜鉛ケイ酸塩鉱物です。別名珪亜鉛鉱と呼ばれ、その美しい蛍光と多様な形態から、古くから鉱物愛好家や研究者の注目を集めてきました。

ウィレマイトの発見と命名

1829年、ベルギーのヴィエイユ・モンターニュ鉱山で初めて発見されました。発見者であるアルマン・レヴィは、学生から持ち込まれた試料を分析し、その際、ネーデルラント王ウィレム1世にちなんで「willemite」と命名しました。表記揺れとして「villemite」も見られます。

ウィレマイトの変種であるトルースタイトは、オランダ系アメリカ人の鉱物学者ヘラルト・トローストに因んで命名されました。

ウィレマイトの性質と産状

ウィレマイトは、短波紫外線に当てると強い緑色の蛍光を示すことが大きな特徴です。日光の下では、繊維状の塊、硬い褐色の塊、アップルグリーンの宝石のような塊など、様々な色や形態で産出されます。

通常、以前から存在していた閃亜鉛鉱鉱体の変質鉱物として形成され、石灰岩などとの共生が見られます。大理石中に産出することもあり、これは異極鉱や菱亜鉛鉱の変成作用による可能性が示唆されています。結晶は菱面で終わる六角柱状で、独特の劈開を示します。

産出地は世界各地にありますが、特にアメリカ合衆国アリゾナ州産、ニュージャージー州フランクリン鉱山とスターリング・ヒル鉱山産のものが有名です。これらの鉱山では、ウィレマイトは紅亜鉛鉱やフランクリン鉄鉱と共産することが多く知られています。なお、紅亜鉛鉱とフランクリン鉄鉱は蛍光性を持ちません。

ウィレマイトの用途

ウィレマイトは、かつて蛍光灯の蛍光体として広く利用されていました。特に、マンガンを添加した人工ウィレマイトは、第一世代蛍光灯の主要成分として用いられました。マンガンをドープすることで、広い白色発光帯を示す蛍光を発するようになります。一部には、亜鉛をベリリウムで置換した種類も存在しました。

しかし、1940年代以降は、フッ素燐灰石構造に基づく第二世代のハロりん酸カルシウム蛍光体、そしてさらにその後は三燐酸系蛍光体へと取って代わられました。

[マンガン]]をドープしたケイ酸亜鉛]は、525nmを中心とした広い緑[[色発光バンドを示します。この緑色発光は、ケイ酸亜鉛格子中のMn²⁺イオンの4T₁→⁶A₁遷移という、d軌道のスピンフリップ遷移に起因すると考えられています。

ウィレマイトと薄層クロマトグラフィー

近年では、マンガンをドープしたウィレマイト（Zn₂SiO₄:Mn²⁺、F254）が、薄層クロマトグラフィーにおける蛍光指示剤として用いられています。

まとめ

ウィレマイトは、その美しい蛍光と多様な形態、そして蛍光体としての歴史的役割から、鉱物学において重要な鉱物の一つです。今後も、その科学的性質や潜在的な用途に関する研究が続けられるでしょう。

もう一度検索